月給17万円から「プロ野球審判」の過酷な現実 審判に転向した元選手は長年いない

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もし1軍の試合に定着することができれば待遇面は一気に跳ね上がる。

「1軍通算出場試合数500試合+年間72試合以上出場」の条件クリアが必須だが、最低保証年俸は750万円までアップ。さらに出場手当も上積みされる。配分は、球審3万4000円、塁審2万4000円、控え審判7000円だ。年間を通じて活躍すれば、出場手当だけで200万円を超える。すべてを合算すれば、年俸1000万円超えも夢ではない。

審判としての1日のスケジュールも気になるところだ。

「ナイターの場合だと、午前中は、ジムなどに行きトレーニングする人が多いですね。近所をジョギングする人もいます。球場入りするのは、15~16時。

球審担当者は、もう少し早めに入り、選手が練習するブルペンに入ったりバッティングケージの後ろについたりして、ボールへの目慣らしをします。その後、休憩を挟み、18時になれば試合開始です。試合後は、反省会を開くので、球場を後にするのは23時くらいになります」(山崎氏)

審判と選手の関係は?

続けて、山崎氏は選手との交流についても興味深い話を聞かせてくれた。

「選手との交流は一切ありません。かつては、一塁ベース付近で談笑したりする姿も見かけられましたが、今は私語・談笑は禁止。飛行機の移動やホテルも別々です。遠征先の居酒屋などでバッタリ会ってしまうことはありますが、一緒にお酒を飲むことは絶対ありません。仲がよい選手に有利な判定をしているなどの疑惑の目を向けられては困るからです。

昔と違い、選手と一定の距離感はできていますが、野球界の仲間という意識はお互いがもたないといけないと思っています。お互いに尊重しあい、リスペクトしあって、プロ野球というよい商品を提供しなきゃいけない。いい試合のためには、よい選手、よい審判が必ず必要なんです」

われわれ野球ファンは、華やかなプロ野球選手の活躍の裏で、こうしたもう1つのドラマがあることを忘れてはならない。まだ今シーズンは残り100試合ほどもある。選手だけでなく、時には審判に注目してみるのも野球の魅力発見につながるのではないだろうか。

(文/AERA dot.編集部・岡本直也)

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