日本の株価が米中貿易戦争で下がると読む理由 楽観的な「早期妥結期待」はかなり危うい

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ただ、こうした「逃げ道」に蓋をする意図か、米商務省は23日(木)に米ドルに対して自国通貨を割安にしている国に対して、相殺関税を課すルールを提案していると公表している。つまり、アメリカの輸入関税引き上げに対抗して、中国が元相場を押し下げれば、その分だけさらに関税を積み増しする、ということだ。

また同日には、米上院の超党派グループが新しい法案を提出している。この法案によれば、ASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国が領有権を主張する海域(具体的には、南沙諸島などを想定)で、平和、安全保障、安定を脅かす行為をした個人(中国人を想定)に対し、アメリカ国内にある金融資産の凍結などを政府に義務付ける、というものだ。

こうしてアメリカ側が圧力を強め続け、それに対して国内政治情勢を踏まえた中国側が譲歩できない、という展開に陥っており、米中間の早期妥結は期待しない方がよいだろう。

もし市場が無反応になっても、企業はやりきれない

こうして米中通商交渉がだらだらずるずると長期化した場合、それに市場がどう反応するかについては、「先輩」の例が参考になろう。その「先輩」とは、ブレグジット(英国のEU離脱)だ。2016年6月に英国で国民投票が行われた際は「ブレグジット・ショック」とも言われたが、最近ではテリーザ・メイ首相の辞任観測報道が流れた際にややポンド安が進んだ程度で、世界市場はほとんど無関心となっている。これは「どうせブレクジットはうまくいかないことはわかっているから、今さら難航しても驚くことではないね」と投資家が達観しているのか、それともあきれ果てているのかはわからないが、材料ないし投資家心理における影響としては、「織り込み済み」と処理されているのかもしれない。

米中通商交渉も、好悪両方の様々な材料が日々流れながら、実際には良くも悪くも何も進まない状態が続けば、ブレクジットと同様に、市場は無反応になっていく展開がありえよう。

ただ、市場はそれでよいとしても、実際にビジネスを営んでいる企業としては、やりきれないだろう。これほど世界の政治情勢に不透明感が強まれば、設備投資や人員採用を含め、事業計画の立案が困難となる。前述の「ずいずいずっころばし」で語れば、「茶壺に追われて戸をぴっしゃん」、すなわち将軍にお茶を献上するための「お茶壺道中」が通り過ぎるまで、戸を閉めて家でじっとしていよう、というのと同様に、世界中の企業は不透明感が去るまでじっと委縮してしまうのではないだろうか。

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