エプソンが「ペーパーレス時代」を勝ち抜く条件 インクジェット式でレーザー式を打ち破る

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自動車でもガソリン車から一気にEVに変わるわけではない。最低10年くらいのスパンはかかる。それと同じくレーザー式からインクジェット式に変わるのも時間がかかるだろう。不連続な形で成長すると思ってくれれば、2025年度までの目標に向けて2021年度の目標が不足しているとは思わない。

「自動車と同様、レーザー式からインクジェット式に一気に変わるわけではない」と語るセイコーエプソンの碓井稔社長(撮影:今井康一)

ペーパーレスと言いつつも、複合機市場は横ばいか微減が続いている。エプソンは既存のレーザー式のマーケットに置き換わってインクジェットで伸ばしたいと思っている。まったく新しいマーケットを一から創造するわけでないので、確実な成長が見込める。他社もインクジェット式の広がりをみて、インクジェット式の導入を加速してくるかもしれない。

市場全体でインクジェット式に移行

――他社もインクジェット式への移行を本格化させたら、エプソンにとってはライバルが増えて苦しくなるのではないですか。

そうは思わない。1社単独でインクジェット式を普及させるのもいいだろうが、やはり市場全体でレーザー式からインクジェット式へ移行するというトレンドが醸成されるほうがいい。インクジェット式を訴求する点でも他社と切磋琢磨する市場にしていきたい。

エプソンは「インクジェットイノベーション」を掲げている。環境問題や技術の進歩を考えてもインクジェット式がトレンドになるのは必然だと思う。

ただ、技術的トレンドの変化よりも、ビジネスモデルの転換のほうが難しい。インクジェットによる革新の意義は技術だけでなく、プリンター業界の収益構造の変化にもある。既存の事業で大きな収益基盤がある既得権益を変えていきたい。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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