「むちゃぶり」から100億事業をつくる 元HP「伝説の社員」が語る新・リーダー論(1)

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新リーダーは「値踏み」されている

ここで忘れてはならないのは、メンバーの気持ちだ。

新プロジェクトが始まって不安を抱えているのは、新リーダーだけではない。同じプロジェクトのメンバーたちも「こいつは本当にリーダーをやれるのだろうか?」と心配しているはずなのだ。

新しいリーダーが誕生したとき、その人が周りから全面的に支持されているケースはそれほど多くないだろう。否定的な感情を持つまでではないにしても、多くのメンバーは無意識のうちに「様子見」している。

「この人はいったいどういう人なのだろう?」

「どういう仕事をする人なのだろう?」

「信頼しても大丈夫だろうか?」

だからこそ、リーダーはイシューから始めてはいけない。目の前の「小さなトラブル」を数多く解決し、まずは短期間で目に見える成果を出すことに注力すべきだ。 そうすることで、その成果を社内・社外のステークホルダー(利害関係者)にアピールし、彼らの信頼を獲得していく。

カリスマタイプでない人ほど、それを意識する必要があるだろう。 これまで目の前の仕事をコツコツやっていた職人タイプの人間が、リーダーになった途端、「この事業のイシューとは?」などと大風呂敷を広げても、はたから見ていて痛々しいだけだ。

「むちゃぶり」されたチームは、まず白けている

ぼく自身、リーダーになりたての頃は、とにかく「小さな仕事」に忙殺され、「大きな仕事」に取り掛かれないのがストレスで仕方なかった。

だが、あるときから180度逆の考え方をするようになった。 小さなトラブルを素早く解決し、困っているメンバーを支援しているうちに、プロジェクトメンバーや社内の中で「赤井に相談すれば、どんな些細なことでも、すぐに対応して問題を解決してくれる」という認識が広がっていったからだ。

ぼくを値踏みしていたメンバーの冷たい視線が、いつしかぼくへの信頼感を帯びるようになり、チームが好循環で回り始めた。もしもぼくが「イシュー」にかかりきりになっていれば、3カ月後にもぼくは「何がしたいのかよくわからないリーダー」のままだっただろう。

特に、このときのLinuxプロジェクトのように、スタートから苦境がはっきりしているような場合には、チームメンバーが自信を失っていたり、白けていたりすることが多い。その意味でも、まずは小さな成果を数多く上げ、チーム内に「オレたちもやればできる!」という雰囲気を高めることが有効なのだ。

そうやってチームが勢いづいていく中で、ぼくが当初に特定していたイシューも最終的には解決された。他社に負けない強固な事業体制を構築し、これがものすごい売り上げにつながっていったのである。

だから「むちゃぶり」されたすべてのリーダーに、ぼくはこう言いたい――「リーダーはイシューから始めるな」と。

赤井 誠 日本ヒューレット・パッカード 元社員

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あかい まこと / Makoto Akai

MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。
1966年、和歌山市生まれ。京都大学工学部卒業。神戸大学大学院修了(経営学修士)。米国テキサス州立大学ビジネススクール留学。日本キャリア開発協会認定 キャリア・デベロップメント・アドバイザー。1991年、日本ヒューレット・パッカード社入社後、ソフトウエア開発エンジニアを経て、経営企画、マーケティングを担当。Linuxビジネスを国内トップの規模にまで成長させ、さらにはHPグローバルでも1位を達成。2011年、起業。現在、マーケティング、事業開発、人材開発を事業の柱としている。

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