「むちゃぶり」から100億事業をつくる 元HP「伝説の社員」が語る新・リーダー論(1)
ひとりの技術オタクが「伝説の社員」になるまで
「今すぐ社長室まで来てくれますか?」
メールの発信者は、ぼくが勤めていた日本ヒューレット・パッカードで社長していた樋口泰行さん。言わずと知れた現・日本マイクロソフトの社長だ。
「来期からスタートするLinux事業の全社プロジェクトですが、リーダーをやってもらえませんか?」
社長室で待っていた樋口さんは、いきなりこう言った。
35歳だったぼくは、迷わずそのオファーを断った。
新卒でHPに入社して以来、理系出身でエンジニア上がりだったぼくは、リーダーとしての経験がほとんどゼロだった。目の前の自分の仕事にコツコツ打ち込むのは好きだったが、自分よりも年上の社員もいる20人近くのプロジェクトチームを率いて、事業を立ち上げる自分の姿など、想像すらできなかった。
思えば、学生時代に運動部でキャプテンをした経験もない。そもそも「オレについてこい!」というタイプのキャラクターではないのだ。
しかし数年後、数千万円規模だった日本HPのLinux事業売り上げは、数百億円規模にまで成長し、国内市場シェア1位、HPグローバルでも世界ナンバーワンを記録することになる。
またそれ以来、世界各国のHP社員がぼくのところに相談の電話をかけてくるようになった。彼らは口をそろえてこう言っていた。
「『何かあったらMakoに聞け』と言われたんだけど……」
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