戦争発言の丸山氏、なぜ辞職させられないのか 自民党は及び腰、勧告決議に強制力もなし

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突然の暴言騒ぎに巻き込まれた維新は、14日に代表の松井氏が「議員辞職は当たり前」などと発言し、同党は離党届を受理せず丸山氏を除名処分とした。15日午後に日本記者クラブで記者会見した松井氏は、丸山氏の議員辞職について「組織としては権限がない。最終的には本人の判断」としたうえで、「政治家の身分がよすぎるため、一度当選すれば(議席を)手放すことはしない」と国会議員の待遇の良さが辞職しない原因との見解も示した。

「国益を損なう発言」と批判しながらも、自民党が決議案採決に難色を示すのは、可決しても実効性がないとの理由もある。衆院に提出された議員辞職決議案が本会議で可決されたのは過去に3例あるが、逮捕や起訴など刑事責任を問われたケースばかり。しかも、可決された決議に法的拘束力がないこともあって、いずれも当該議員は議員辞職を拒否している。今回のように「犯罪行為ではない不適切な発言で議員辞職決議案を提出、可決するのは前例がなく、単なるパフォーマンスに過ぎない」(自民国対)というのが自民の言い分だ。

決議案に賛成せざるを得ない自民党

さらに、先の桜田義孝氏の五輪担当相辞任など、自民議員が失言や暴言で閣僚辞任に追い込まれた場合、自民党はいずれも野党側からの議員辞職要求を拒んできた。「今回、国会外での発言内容などを理由に辞職勧告決議を可決すれば、失言議員への責任追及の前例となり、乱用の恐れも出てくる」(自民幹部)というわけだ。

ただ、野党が提出した決議案の採決を自民が拒否するか、採決しても反対か棄権すれば「丸山氏の発言を容認するのかと、国民が猛反発する」(閣僚経験者)のは間違いない。維新の松井氏も「提出できれば自民も賛成せざるを得ない」と指摘する。にも関わらず、「自民は今国会で決議案を棚ざらしにして、廃案を狙うのでは」(国民民主国対)との見方もある。

こうした与野党調整の難航を見透かしたように、騒動後に国会から姿を消した丸山氏は、15日夕刻にツイッターで「憲政史上例を見ない、言論の府が自らの首を絞める辞職勧告決議案かと。提出され審議されるなら、こちらも相応の反論や弁明を行います」などと、議員としての居座りを宣言した。

確かに、過去の例と同様に辞職を拒否し続ければ、衆院が解散されない限り、丸山氏の議員としての身分は保障される。その場合、無所属でも議員歳費やボーナスに文書通信交通滞在費や秘書手当などが規定どおり支給されるため、「支給総額は最大で年間7000万円近くになる」(衆院関係者)という。

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