戦争発言の丸山氏、なぜ辞職させられないのか 自民党は及び腰、勧告決議に強制力もなし
維新では過去に党を除名されても議員を続けた上西小百合元衆院議員(現在はタレント)の例がある。同氏は2012年暮れの衆院選で初当選し、その特異な言動で「浪速のエリカ様」などと話題を振りまいた。2015年3月に「体調不良」を理由に衆議院本会議を欠席した際、本会議前日に居酒屋やショーパブをはしごしていたことや男性秘書と不倫温泉旅行に出かけていたことが週刊誌などで報じられ、国会でも騒ぎとなった。
同氏は「不倫旅行はデマによる中傷」などと反発したが、維新の創業者で当時は党最高顧問だった橋下徹元大阪市長が、「国会欠席前日に居酒屋とショーパブに行ったことは議員としてアウト」と強く議員辞職を促した。しかし、上西氏は「法に触れない限りは議員の身分は奪われない」と拒否して除名処分となり、2017年秋の衆院解散まで無所属の議員として過ごした。
約2年半の無所属議員時代、上西氏は表舞台で政治活動をほとんどせず、「億を超える貯金ができたのでは」(維新若手)などと揶揄された。このため、今回丸山氏が議員を続ければ「歳費などの大半が丸儲けになる」(同)との見方も少なくない。自民党からも「首相が衆院解散をしなければ上西氏のケースと同じことが起こる」(国対幹部)との声が出ている。
元キャリア官僚の橋下チルドレン
丸山氏は大阪生まれで、東大経済学部から経産省に入省した元キャリア官僚。約3年で経産省を退官し、松下政経塾を経て、2012年の衆院選にいわゆる「橋下チルドレン」として維新から出馬して28歳の最年少で初当選した。現在3期目だが、その経歴から「政策通で維新のホープ」(維新若手)との見方もあった。
ただ、飲酒による一般人への暴行事件や、2017年衆院選後に党代表選実施を主張し、橋下氏の怒りを買って離党騒動を起こすなど、「異常な行動」(維新幹部)も目立っていた。維新は4月の大阪府知事・市長の「ダブル選」と衆院大阪12区補選に圧勝して、念願の大阪都構想実現に道筋をつけたばかり。今回の丸山氏の言動は「維新のイメージダウンにつながり、参院選にも悪影響が出る」(維新幹部)ことを懸念している。だからこそ、松井氏らが先頭に立って議員辞職の旗を振ったのだ。
16日の衆院議院運営委員会理事会では、立憲民主党が辞職勧告決議の検討を求めたが、自民党は「対応を協議中」とかわした。与党は辞職勧告の「基準を緩める」ことに慎重で、公明党も「丸山氏は辞めるべきだが、感情論でやるべきではない」(国対幹部)との立場からだ。このため、決議案提出を受けた週明けの議運委理事会で調整難航は避けられそうもない。そうした中、野党の一部からは「憲法や国会法に基づく懲罰」を求める案も出ている。懲罰なら除名や登院停止など罰則を伴うからだが、こうしたことも与野党協議の迷走につながっている。
当の丸山氏は依然としてツイッターでの抵抗を続けているため、与野党双方の苛立ちも募る一方だ。ただ、騒動の「当事者」とされる維新は丸山氏の説得もできずに「飼い犬に手を噛まれて、勢いがそがれた」(幹部)と嘆くばかり。その一方で、自民は“ブーメラン”を恐れて右往左往し、それを見透かした丸山氏が居座り決め込むという奇妙な構図だ。
永田町では、「こんな状況を続ければ、令和新時代の道筋を決める夏の政治決戦に向けて、国民の政治不信が強まるばかり」(首相経験者)との声も広がり、国民も納得する問題決着への道筋はまだ見えてこない
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