幼児期までに「多様な細菌」と触れ合うべき理由 「ママ医師」が教える菌との正しい付き合い方

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口から消化管に入り込んでいった菌は、腸で繁殖して腸内細菌叢をつくります。消化管だけでなく、皮膚、そして喉や鼻などの気道は、外界と通じている場所です。こういった場所にはさまざまな細菌が生息していて、大人1人には少なくとも数十兆個の細菌がいると言われています。

手のシワの奥にはたくさんの常在菌がいて、その上に病原菌や汚れが付着していきます。確かに、食品を扱う前には、手の汚れだけでなく、手についた病原菌をしっかり落とすことが必要です。そのため、衛生的手洗いといって、せっけんでしっかり手洗いしたうえで、アルコール消毒を行ったりします。

さらに、医師が手術を行う前にする手洗いでは、手についた病原菌だけでなく常在菌もできるだけ落とすことを目指し、念入りな洗浄に加えて消毒も行います。それでも手には、少し常在菌が残った状態です。菌を完全にゼロにすることはできないのです。

確かに抗菌せっけんを使ったほうが手についた細菌は減るのですが、日常的な手洗いで使うぶんには、抗菌せっけんのほうが普通のせっけんよりも病気が予防できるというわけではないということは、研究でも示されています。

2004年にアメリカのコロンビア大学から発表された研究では、238の一般の家庭を2グループに分け、一方には殺菌成分入りのハンドソープや衣類用洗剤を使ってもらい、もう一方には殺菌成分の入っていないものを使ってもらいました。

48週間にわたって、それぞれの家庭で咳や鼻水、喉の痛み、発熱、嘔吐、下痢などの感染症の症状があるかどうか追跡したところ、どちらのグループでも、症状の発生率に差はありませんでした。

抗菌せっけんが耐性菌を生むリスク

そもそも風邪や感染性胃腸炎を予防する効果は、抗菌・除菌表示のある製品とそうでない製品で、理論的に差はありません。というのも、風邪や胃腸炎の主な原因はウイルスですし、インフルエンザもインフルエンザウイルスが原因だからです。

ウイルスは細菌の10分の1から100分の1程度の大きさしかなく、基本的な構造も、細菌とはかなり違います。抗菌せっけんやアルコールフリーの除菌製品に配合されている殺菌成分は、細菌を殺すためのものなので、一般にウイルスには効果がありません。

病気を予防するためには、殺菌することよりも、物理的に汚れや細菌、ウイルスを洗い落とすことのほうがずっと大切なのです。

さらに、抗菌せっけんを使うことは、耐性菌を生むリスクがあることも知られるようになってきました。病気を予防する効果がないのに耐性菌を生むリスクがあるならば、抗菌せっけんを使わないほうがいいということになります。

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