バイトから5年で専務に昇進した女性の生き様 いじめ経験が社会に出て役立った

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かといって傷つかないわけではない。毎日毎日、学校へ行けばいじめられる。明日を楽しみに生きていた。明日こそいじめられないだろうと言い聞かせながら。

「私ね、リカちゃん人形になるのが夢だったんです。妹たちはかわいいねって言われるのに、私は親にすら言われたことがない。いじめっ子からはデブだブスだって言われてたから、かわいくなりたかった。自分を守るために明日、リカちゃんになれるかもしれないから楽しく生きようって思っていたんです」

いじめ経験が、社会に出てホステスをはじめると、大いに役に立った。

実家はバブルの崩壊のあおりを受け数千万円もの大きな借金を抱えていた。借金返済を助けるため野口さんは手にした給料をすべて実家に入れていたという。

「学校でいじめられ続けてたせいか、社会に出たとき、こんな私なんかに仕事を教えてくれたり、優しくしてくれることに感動しちゃって。我慢することにも慣れていたから、お給料を実家に入れることは苦にならなかったの」

門前払いでも折れない強い心

ホステスの仕事は意外にも天職だった。もともと、リカちゃんのようにかわいく、おしゃれをして生活したいと思っていた。ホステスは着飾ることが仕事の一部だ。

今もリカちゃん人形への憧れから、毎朝着る服を選ぶときは「今日は宝塚」などテーマを決め何者かになりきるように気持ちを高める(写真:週刊女性PRIME、撮影:坂本利幸)

いじめられ慣れてるでしょ? それがいいキャラに変換できて、なんでもできちゃうの。アイスペールにシャンパンを入れてガーッと飲んだり、いじられ役をやったり。だからパフォーマーとして活躍できたわけ。もう、あのころのいじめっ子ありがとう! って思ったわ(笑)」

ホステス時代にも靴を隠されるなどのいじめにあった。しかし、いじめをするホステスにも自ら近づいていった。

「誰かが聞いてあげなかったら、この人は爆発しちゃうだろうなって思ってたから、よく話を聞いていたの。それを深掘りして聞き直したりしていくと、すごく仲よくしてくれるの。それで“実はさ……”って始まるのよ、自分のつらい話が。100人中100人そうだった」

後に実践する“嫌な人撲滅運動”はホステス時代から始まっていたのだ。

野口さんは日常の小さなことでも「なぜ?」と考えるクセがある。「なぜ自分はあの店に行かなくなったのだろう」「なぜ、あの人はこんなことをするのだろう」と理由を探すのだ。野口さんの斬新な発想の多くは、こうした素朴な疑問に基づいている。

路面店をたたみネット販売を始めたのも「なぜ、こんなもったいない売り方をするんだろう」という疑問からだ。

「お客さんが10人来たら、要望を聞いて10個違う花束を作らなくちゃいけないでしょ?」と野口さんは言う。

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