鎌倉市はマナー条例でどう変貌するのか

「住んでよかった、訪れてよかった」観光都市

人気アニメ『スラムダンク』の舞台として江ノ電鎌倉高校前の踏切や線路で観光客などが撮影をする様子も多く指摘されていた。条例施行後の日曜日の昼下がり、現地では踏切周辺から続く坂の上まで80人以上の男女が撮影に訪れていた。中国語が飛び交い、ほとんどが台湾や中国からの観光客だ。

電車が来ると踏切付近に駆け寄り、カメラやスマートフォンのシャッターを切る。国道134号線に通じる踏切は車の往来が絶えず、土日祝日に市民安全課によって派遣された交通整理員も常に交通整理に追われている。

踏切が開くと、車道近くまではみ出た人だかりに向かって車がクラクションを鳴らす光景も見られた。中国から観光で訪れたという36歳の男性は「『スラムダンク』は中国でとても人気がある。この撮影スポットはネットで見て知った。条例については知らない」と話す。

人気アニメの聖地となっている踏切前で車道にはみ出て撮影する人も(記者撮影)

江ノ電と市は、条例施行前から線路上を歩いたり、踏切内で立ち止まったりしないようにとの「線路周辺でのお願い」、ホームの黄色い線を越えて撮影しないようになど「ホ―ムでのお願い」、車道を出ない、学校や民家に立ち入らないようにとの「沿線でのお願い」を英語、中国語、韓国語、日本語の4カ国語で注意喚起した看板を線路付近に設置している。しかし看板に気づかない観光客も多く、踏切前の車道にまで出る撮影は今も恒例の風景と化している。

人気商店街の模索と挑戦

約240店が連なり、「1日5万から6万人が訪れる」(鎌倉小町商店会会長高橋令和氏)小町通りは、鎌倉駅そばから鶴岡八幡宮方面へと続く鎌倉の目抜き通りの1つだ。テイクアウトできる飲食店などが並び、平日も多くの観光客でにぎわう。休日ともなれば通りは人であふれ、人に密着しそうになりながら歩行するようになる。全国から視察にも訪れる国内有数の商店会は、長年食べ歩きがもたらす問題に悩まされてきた。

同商店会会長の高橋氏によると、混雑した通りでの食べ歩きでほかの歩行者の服に食べ物がついたり、路上のゴミのポイ捨てがあったり、店の商品に食べ物をこぼすなどの問題が絶えず、マナーを守ってもらえるように5、6年前から議会に条例を陳情していた。

「禁止ではなく、マナー条例ということで、歩く観光客の思いだけだ。それを啓発するための条例。罰則規定もなく、注意する人もいない。お客さんには買った店やその店の場所で食べるよう各店舗に話しているが、実施されないことも多い」という。

「食べ物の串などは路地の側溝に入れられたり、側溝を上げてみると串が何本も入っていたりすることも多かった」(同)。せんべい店では以前は紙に入れていたが、路上へのポイ捨てが多く、全部食べられるように海苔で巻いてゴミを出さない工夫をしたという。「ゴミについては苦労している。有料のため店の負担も大きく、課題だ」(同)。

同商店街の店先で食事をしていた子ども連れの20代女性は「条例はテレビで見て知っていたが、詳しい内容はよくわからない」と話す。20代男性は「いろいろな食べ物を外で食べるのが鎌倉の楽しみでもある。店が困っているならマナーに気をつけるというのはわかる」と語った。地元の住民の40代女性は「家の前に食べ物のゴミを捨てられて困っている家も多い。条例は歓迎」という。

4月1日の条例施行直後、同商店街は店ごとの小さいボードや張り紙のみの施行前と変わらない景観を呈していた。店先に「この場所で飲食しないでください」とのボードを置いた店主は「2年前から置いていて、施行後に置いたわけではない」と答えた。

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