「管理職とプレイヤー」を両立する人が陥るワナ プレイング・マネジャーはなぜ難しいのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

チームも「リーダーとしてもプレイヤーとしても優れているべきだ」という過度な期待を抱いています。両方できて当たり前、どちらかが少しでも劣っていると、ネガティブな箇所に注意がいく人間心理が働いて「低評価」を下します。

この際、「プレイヤーとしての成果」とは別のところにある「リーダーとしての努力」は、残念ながらチームメンバーの視界には入りません。

あなたがもしプレイング・マネジャーなら、「自分が我慢して努力すれば済むという問題ではない」ことにまずは気づいてほしいと思います。

「高評価」なリーダーは部下をこう見る

ドイツの情報通信会社数社の従業員を対象にした、「あなたの上司のリーダーシップ・スタイル」について答えてもらい、業績および従業員の満足度との関連を調べました。

調査の結果、「知的な刺激を与えてくれる/優れた業績にフィードバックをくれる/自分がグループの目標に向かって貢献していると実感させてくれる」タイプのリーダーが率いるチームは、ほかのタイプのリーダーが率いるチームよりも業績がよく、メンバーの満足度も高いことが判明しました。

つまり、「適度な裁量を持たせ、かつフィードバックをしっかり行うリーダー」への満足度は高く、チームとしての成績も確かに向上することがわかったのです。これは、プレイング・マネジャーも、部下にある程度任せるべきで、肝心なのは成果に対してフィードバックすることだと示唆しています。

ギャラップ社による別の調査によれば、人の長所に注目するリーダーの場合、部下の67%が仕事に没頭していたとのこと。短所に注目するリーダーの場合、仕事に没頭する部下はわずか31%だったので、リーダーが部下をどう見るかで部下の熱意が決まるともいえます。

『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

また、IBM Work Trendsが世界26カ国で行った調査によれば、何らかの表彰を受けた従業員の「仕事の没頭レベル」は、そうでない従業員の3倍も高かったそうです。

そのほか、多種のリサーチを見ても同様の報告がなされていることから、リーダーが1人で先頭を突っ走らず、チームメンバーに決定権を持たせて長所に目を向けたフィードバックを行うことが、プレイング・マネジャーとして生き残る道に思えてなりません。

プレイヤーとしての自分だけにとらわれない心構えを備えておくことこそ、プレイング・マネジャーとして成功する鉄則なのです。

スティーヴン・マーフィ重松 スタンフォード大学心理学者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Stephen Murphy-Shigematsu

ハーバード大学大学院で臨床心理学博士号を取得。1994年から東京大学留学生センター・同大学大学院の教育学研究科助教授として教鞭を執る。その後、アメリカに戻り、スタンフォード大学医学部特任教授を務める。現在は、医学部に新設された「Health and Human Performance」における「リーダーシップ・イノベーション」という新しいプログラム内で、マインドフルネスやEQ理論を通じて、グローバルスキルや多様性を尊重する能力、リーダーシップを磨くすべなどをさまざまな学部生に指導している。著書に『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社)、『多文化間カウンセリングの物語』(東京大学出版会)、『アメラジアンの子供たち――知られざるマイノリティ問題』(集英社新書)など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事