「管理職とプレイヤー」を両立する人が陥るワナ プレイング・マネジャーはなぜ難しいのか

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これは、「富裕層がもっと豊かになれば、富が浸透して貧困層まで広がり、全体が豊かになる」という経済学の「トリクルダウン理論」と似た発想です。

英語の「trickle down」には「ポタポタ滴り落ちる」という意味があります。大金持ちがポタポタ垂らしたもので貧困層も潤うはずというのですから、傲慢の象徴のような言葉ともいえます。

しかし、その気はなくても、プレイング・マネジャーはたとえ小さなチームであっても「トリクルダウン理論」を持ち込む可能性があることはぜひ自覚してほしいポイントです。

ハーバード大学のリチャード・カッツ氏との共著の中で、私たちは「リーダーシップにおける相乗効果」について発表しており、数々の調査と照合した結果、リーダー個人の成果ではなく「チーム全体の成果」にリーダーが焦点を合わせることで、結果的に何倍もの成果が生み出されると結論づけています。「トリクルダウン理論」など成立するはずもないのです。

とはいえ「自己犠牲」だと引かれる

かといって、大量の業務を自分がこなして休ませるといった「自分を犠牲にした働き方」だと、いずれ無理が生じます。部下もありがたがるどころか、「そんなことまでしてくれなくても」と負担に感じるかもしれません。度を超すと、今度は「マイクロマネジメント(過剰管理)」という問題に陥り、部下は「何も任せてもらえない」と一層不満を募らせます。

自己犠牲の働き方で疲弊したリーダーは、「こんなに頑張っているのに」「うちのチームは全然使えない」と次第にストレスを溜めるようになります。

その結果、心身に支障をきたしては元も子もありませんし、「リーダー対チーム」という対立構造が生まれれば、お互いが努力すればするほど、チームは分断していきます。

また、自己犠牲の働き方をするリーダーはやがてプレイヤーとしての個人の成果が思うように上がらなくなります。その結果、チーム内外から「なぜあの人が上司なのか」「自分はできていないくせに」という目で見られるようになります。

プレイング・マネジャーに下される「心的評価」は、表のように非常に厳しいものです。プレイヤー面とマネジメント面、両方で結果を残さないと上からも下からも評価されないのです。

会社はプレイング・マネジャーに対して「リーダーとしても個人としても成果を出す」ことを求めます。

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