渋沢栄一が「五月病に悩む新社会人」に贈る言葉 新環境で「人間関係の逆境」に立たされたら?

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過去の成功体験がないということは、逆に言えば、過去の成功体験にとらわれず、新しい成功を生み出せる可能性があることを意味します。そもそも日本はこれから人口が減少しますから、日本という枠組みだけで成長しようとしても限界があります。

したがって、海外の成長を取り込む発想を持つ必要があります。ラッキーなことに、今はインターネットやテクノロジーの発展によって、国境をあまり意識することなく海外とつながることができます。ビジネスの第一線に立つ人たちが、このマインドセットをきちんと持てれば、日本はこれからも安泰でしょう。そう、未来を信じる力を持つことが大事なのです。

渋沢栄一の言葉には、非常に未来志向の強いものが多く、「未来を信じる力」の大事さを説いています。ただ、信じるといっても神様に念じるのではなく、自ら動くことが大事であると言うのです。

「人為的な逆境」に陥ったら、自ら動いて打開せよ

渋沢栄一が書いた『論語と算盤』という著書の中に、「大丈夫の試金石」という言葉があります。その中で、「逆境に立たされたときはどうするか」という話があるのですが、例えば地震や台風といった自然の逆境に対しては、自分ではコントロールできないので、こういう場合は「自らの分をわきまえる」とか、「足るを知る」(現状に満足して多くを望まない)といった知恵を実行するのが必要だと言います。

でも、逆境には自然由来のものだけでなく、「人為的な逆境」もあります。これは職場の付き合いとか、上司との付き合い、あるいは地域における付き合いといった、対人との関係から生じるトラブルを意味するのですが、そのような逆境に直面した場合の心構えとして渋沢栄一はこんなことを言っています。

「自分からこうしたい、ああしたいと奮励さえすれば、大概はその意のごとくになるものである。しかるに多くの人は自ら幸福なる運命を招こうとはせず、かえって手前の方からほとんど故意にねじけた人となって逆境を招くようなことをしてしまう」ということです。

つまり、未来を信じて、自分自身が何をしたいのかという「やりたいベクトル」さえ立ててさえおけば、幸福を招き入れることができるのです。ところが、大概の人はそうせずに、「どうせダメだから」などとすねた考え方をしてしまいがちです。それでは、むしろさらなる逆境を招くことになります。

渋沢栄一をリスペクトしていたアメリカの実業家に、アンドリュー・カーネギーがいます。鉄鋼で財を成し、ニューヨークにカーネギーホールを設立するなど文化支援も行った人ですが、彼もやはり「成功者は自分のやりたいことを仕事にしている」という言葉を残しています。

これらの言葉は、社会の中枢になりつつある団塊ジュニア世代だけでなく、新社会人の皆さんにもいえることだと思います。五月病の原因のほとんどは、職場における人間関係、与えられた仕事に対する自信のなさからくるものばかりです。まさに人為的逆境です。それを乗り越えるためにも、自分なりの「やりたいベクトル」を立ててみてください。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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