投薬治療を保障、日本初「おくすり保険」の思惑 激化する「代理店チャネル」めぐる販売競争

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住友生命グループが新商品を投入した背景には、大手や中堅の生保が保険ショップチャネルを強化し、顧客獲得競争が激化していることがある。第一生命ホールディングス傘下のネオファースト生命は、健康診断結果が良好であれば保険料を割り引く「健康増進型保険」などを武器に攻勢をかけている。また、中堅生保の朝日生命も代理店チャネル専用の保険商品ブランド「スマイルシリーズ」などを展開し、営業職員以外の販売チャネルの開拓に力を注いでいる。

新商品説明会で「薬剤治療への保障を提供し、健康長寿社会の実現に寄与したい」と話すメディケア生命の柏原正幸取締役(記者撮影)

生命保険文化センターが発表した2018年の「生命保険に関する全国実態調査」によると、営業職員経由で保険に加入した人は全年齢平均で5割台となり、10年前の7割台から低下した。40歳以下だと、その割合は4割台で、その一方で伸びているのが保険ショップなどの代理店チャネル(銀行窓販は除く)だ。代理店経由の加入割合は10年前の1割以下から約2割に上昇した。20~40歳の若年層で見ると、3~4割が代理店を通じて保険に加入している。

ネットで事前に情報を収集し、比較検討して保険を能動的に選ぶ層は確実に増えており、その受け皿として保険ショップなど代理店チャネルが選ばれている。

年間獲得目標は約3万件

メディケア生命は、年間約4万件を販売する主力の医療保険「メディフィットA」に次ぐ、約3万件の獲得を「おくすり保険」の年間目標として掲げる。若年層と親和性の高い保険ショップに加え、シニア層向けに銀行窓販などでの販売も見込んでいる。従来の入院・手術保障が中心の医療保険や、がん保険に加入している顧客への上乗せ保障としても提案していくという。

ただ、これまでにない商品だけにどれだけ受け入れられるかは未知数だ。

「20~30歳代の保険料は意外に高く、若年層が多い保険ショップチャネルで上乗せ保障としての販売は難しいかもしれない。むしろターゲットは薬剤治療ニーズを感じやすく、保険料の支払い余力のあるシニア層ではないか」

保険や家計の相談業務を行っている「なごみFP事務所」代表でファイナンシャルプランナーの竹下さくら氏はこう語る。おくすり保険の販売方法としては、銀行窓販で退職金を活用したシニア向けの「保険料まとめ払いプラン」なども有効ではないかと指摘する(現在は月払いのみに対応)。

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