日本生命と第一生命、豪州シェア戦争の行方 日生が先行する第一生命を追撃
日本生命保険が豪州大手銀行ナショナルオーストラリア銀行(NAB)の生保事業を買収することで合意した。NAB傘下で保険事業を担うMLC社の株式80%を取得する。買収金額は約24億豪ドル(約2040億円)で2016年9~12月の間に手続きを完了する予定。MLCはNABと20年間の販売契約を締結しNABが抱える代理店や銀行窓販チャネルなどを活用していく。日生は取締役7名のうち6名(3名は社外)の指名権を得る方向であり、MLCの新CEOには、現在のNABの保険部門長が内定している。
NABは総資産では豪州首位の大手銀行。保険やアセットマネジメント(資産運用)を含むウェルス事業が収益の7%を占める。うち買収対象となる生保事業の収入実績は17.8億豪ドル(約1510億円)、当期利益は1.6億豪ドル(約136億円)。保障性商品の保険料収入では個人保険で2位、団体保険も含めると5位と、大手の一角を占める。ちなみに豪州での生命保険トップは第一生命保険が2008年に3割弱出資し、その後に完全子会社化したTAL社だ。
豪州の生保市場は二ケタ成長
豪州保険市場は、規模では日本の15%程度にすぎないが、2014年時点で過去10年の間に、保障性商品の保険料収入が年平均で12%伸びている。先進国として所得水準が高いうえ、国連によると2015年から2050年にかけて人口が46%も増加すると見込まれており、成長期待が大きい。
市場の見通しが良好であるにもかかわらず、NABが事業を売却するのは、現地で銀行の資本規制が強化されてきたため。NABも銀行に比べて利益率が低く、資本を食う保険事業の改善策を模索していた。日生は3年前に買収の検討を開始し、それ以来、「NAB、MLCの経営層から実務層にわたって幅広く交流し、信頼関係を築いてきた」という。NABは銀行業を中心に経営資源を集中させ、保険業では販売手数料収入の拡大に力を入れていくことになる。
生保の海外大型M&Aでは、いち早く動いた第一生命が今年2月に米国プロテクティブ社の買収を約5750億円で完了させ、今期からグループ利益への貢献が始まっている。7月には明治安田生命保険が米国のスタンコープ社を約6246億円で買収すると発表。続く8月には住友生命保険が約4666億円で同じく米国でシメトラ社の買収を公表しており、巨艦・日生の動向が注目を集めていた。
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