日本生命と第一生命、豪州シェア戦争の行方 日生が先行する第一生命を追撃
日生の筒井義信社長はかねて大型買収の可能性について問われた際、「相互会社として少なくとも一点集中の大型投資は避けるべきだ」と発言し、保険だけでなくアセットマネジメントに事業を広げることや対象地域の分散の重要性を強調していた。
格付け会社ムーディーズの久保英次アナリストは、日生の自己資本など規模に照らして「慎重に海外展開を進めている」と今回の買収を分析する。また「保有することになる保険契約のバランスシート上のリスクも限定的」という。
海外で保険、資産運用の拡大に本腰
日生は買収にあたり、「中長期的な成長基盤の構築と豪州ナンバーワン・プレゼンスの奪取」を経営目標に定めた。
そのため日生の販売執行・業績管理ノウハウを活用した販売推進やアセットマネジメント子会社の運用力活用などシナジーの追求を図っていく。またITシステムなどに新規投資を行って、商品開発力や引き受け・支払い査定能力の高度化、事務効率化など競争力の引き上げを狙う構えだ。
競合他社には「来年3月に買収完了予定の三井生命の案件を抱えながら、並行してこのようなスキームで合意したことには底力を感じる」と評価する向きもある。
日生は4月からスタートした3カ年経営計画において、国内の保険事業ととともに海外保険事業、アセットマネジメントを中心としたグループ事業も強化する方針を打ち出した。既存の国内保険事業以外のグループ事業純利益を前期の100億円から、3カ年で300億円にまで伸ばす計画だ。三井生命に続いてNABと買収合意に至ったことで、300億円目標の達成に向けて、大きく歩を進めたといえる。
ただこれまでタイ、中国、インド、インドネシアと海外保険会社への出資、協業を積み重ねてきたものの、経営権を取得するマジョリティ出資は初めての経験となる。加えてシナジー発現や競争力強化に踏み込んでいくだけに、その分、マネジメントの難易度も高くなると思われる。
300億円の先には、10年後にグループ純利益1000億円という目標が控える。今回の買収を通じた海外事業の経営ノウハウの早期蓄積やその後の応用が、10年後の目標達成に向けた一つのカギとなる。
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