ワンマンを納得させる戦略は、ワンマン体制を保障することでもある。金正恩委員長からすれば、トランプ大統領と友人関係を確立できたことは、事実上、体制が保障されたに等しい。それをみずから壊すべきでないと判断するのは当たり前だろう。
問題は、ワンマン国家を確立してきた金正恩委員長は、ワンマン会社を経営した経験がないことだ。トランプ大統領は、ワンマン会社の経営者として数多くのビジネス経験がある。アメリカ国内でも世界中でも、ワンマン経営者が、一生、独裁経営を行うケースは枚挙にいとまがない。トランプ大統領は、金正恩委員長に対して、「北朝鮮=経済立国」への勧めを説いているのである。
アメリカのCBSテレビは、「経済の活性化は独裁体制への崩壊につながる可能性がある」と指摘し、「金正恩委員長は、それを恐れているのではないか」と分析している。その点、第2回米朝首脳会談がハノイになったのは、ベトナムが経済活性化を進めつつ、政治的には、典型的な共産党支配の国だから、という説も、上記のCBSテレビは紹介している。
ただ、その根幹にあるのは、「核の横流し」への道を完全に閉じることであり、北朝鮮に対しては、「核の全面放棄」というのが、「必然的な要請」なのである。
アメリカは北朝鮮に核の全面放棄を説得する
この点で、ロシアは北朝鮮側の交渉カードに収まるには、外交大国に過ぎる。北朝鮮のレア・アースの埋蔵量は、中国に次いで多いのではないか、という報道が目立つようになってきたが、レア・アースを用いる小型モーターを多用する自動車産業は、日本や中国やアメリカには大いに関係があるが、ロシアにはあまり関係がない。
ロシアは、エネルギー戦略と地政学的な影響力、強いて言えば、領土拡張が主要戦略である。地政学的な北朝鮮への影響力拡大に関して、プーチン大統領は今回の金正恩委員長との初会談で、大きな布石を打ったことになる。
北朝鮮が、核兵器を全面放棄することで、経済立国に邁進し、朝鮮半島に完全な平和を訪れるようになれば、ロシアのエネルギー・パイプラインを北朝鮮経由で韓国までつなげるという予想図もある。しかし、北朝鮮の核兵器へのこだわりで、前進する気配はない。
日本にとっては、アメリカ軍の韓国からの引き揚げが懸念材料として存在する。しかし、そのリスクはプーチン大統領の朝鮮半島への地政学的な影響力拡大が見込める中では、現実的でなくなったと見ていい。日本としては、一安心といったところだ。
今後、トランプ大統領の強いリーダーシップの下で、アメリカは核の全面放棄を北朝鮮に粘り強く説得していく。その過程では、当然、ロシアや中国と綿密にコミュニケーションしていくことになる。
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