アメリカの「社会主義化」が妄想ではない理由 2020年の大統領選は1896年の再現になる?
そしてジャネット・イエレン議長を経てジェローム・パウエル議長となった現在、4.5 兆ドルまで膨らんだバランスシートを、2018年末の株の下落で、わずか1兆ドル減らしたところで量的金融引き締めを止めるというFED。それどころか、今度は量的金融緩和を非常手段ではなく、通常手段で使うかもしれないという。昔の保守的なアメリカ人なら何というだろうか。しかし今は保守の象徴だったWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)や保守派シンクタンクのエコノミストが最も金融緩和を主張している時代である。先進国の与党の政治家はリーマン後の好景気の長さを自慢するが、それならばなぜ、その期間に借金が膨らむのか、経済が堅調なら借金が減るのが本来の資本主義の姿ではないのか。
もう一つの金融市場の「ワイルドカード」とは?
そんな中、もう一つの金融市場の「ワイルドカード」は、東洋経済オンラインでも複数の人が解説していた、前出のMMT(現代金融理論)などの新潮流の台頭だろう。
個人的には、もし日本がアメリカの許しを得ずに独断でMMT理論にそって財政拡大を断行すれば、株式市場は下落するとみている。それはMMTの理論が「正しい」あるいは「間違っている」からではなく、今の段階では、中央銀行やIMFなどの金融エリートは、MMTを支持することはできないからだ。
彼らは理論を知らないのではない。今の金融市場は、むき出しの資本主義だったアナーキー(無秩序)な金本位時代から、彼らのような金融エリートが秩序を構築してきた。そして彼らがそれを堅持することで、少なくともリーマンショックが起きるまでは世界経済の発展に貢献したことは疑いの余地はない。
ならば、そこに登場してきたクリプトカレンシー(暗号通貨)や、復活したMMTの理論は、ヒエラルキーの秩序を管理するエリートからすれば許容できない存在である。彼らに逆らえば、今の市場力学では、必ず攻撃の対象になる(トルコなど)。ただし、その金融エリートの政策が社会として許容できない格差を生み、資本主義社会をリードしてきたアメリカの政治で社会主義政策がさらに浸透するならMMTが、ブードゥー教からメジャー(中心的な存在)になる可能性は十分ある。
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