アメリカの「社会主義化」が妄想ではない理由 2020年の大統領選は1896年の再現になる?
その可能性を見るうえで、「アメリカに社会主義は根付かない」という判断をするのは間違いだ。過去アメリカは、国民のリベラル化にそって着実に「社会主義的政策」を進めてきた。特に、貧富の差が拡大した直後は政治面では、リベラルの台頭に耐えきれずビジネス側に立つ保守もリベラル化した。
2020年の大統領選は1896年の再現に?
その意味で2020年の大統領選は、1896年の再現を予想している。1896年は、まず民主党の予備選で経済弱者の支持を受けたウイリアム・ジェニングス・ブライアン氏が、ビジネス優先だった「ブルボン民主党」の現職のクリーブランド大統領を抑え、民主党の大統領候補になった。そして本選ではロックフェラー・カーネギー・JPモルガンの援助を受けた共和党のウィリアム・マッキンリーと激闘した。
接戦の末ジェニングスは惜敗したが、マッキンリー暗殺後、繰り上げで大統領になった セオドア・ルーズベルトは、共和党の大統領のままリベラル路線に転換した。そして後継者のタフトが再び共和党を保守路線に戻ると、ルーズベルトは、今度は自らリベラル政党をつくりタフトの再選阻止に動いた。この時、前述のジェニングスはセオドア・ルーズベルト大統領を支持した。1912年の本選では、共和党は分裂し、結局民主党のウッドロー・ウィルソン政権が誕生した。
注目はこの時代には存在したアメリカ社会党を率いたユージーン・デブスは、大統領選本選で6%の支持を受けていることだ。つまりそれだけでこの時期のアメリカが社会主義へ傾斜していたことがわかる。その結果、女性の選挙権の拡大、上院選挙の直接選挙への変更など、ウィルソン大統領の政策はますますリベラル化を加速した。だが第1次世界大戦後、リベラル政治に飽きたアメリカでは、その反動を利用した「オハイオギャング」によって共和党のウォーレン・ハーデイング政権が誕生した。その後は有名な空前の史上最大のバブルになったが、崩壊すると、今度はフランクリン・ルーズベルトによる長期の民主党政治がスタートした。
それでもソ連と軍拡競争した冷戦時代を通し、アメリカが財政規律を守ってきたのは、金融のエリートたちがMMT理論を知らなかったからではない。そもそもMMTは新潮流といっても新しいものではなく、チャータリズム以前には、ジョン・ロウが1705年にMoney and Trade Consideredで原型としての理論を展開し、英国では1695年のリコインエイジで、アイザック・ニュートンやジョン・ロックといったそうそうたるメンバーを相手に、チャールズ・ダヴナントが信用創造を主張している。
そしてニクソン大統領によって金本位の縛りがなくなった後は、大なり小なり先進国経済はどこもこの理論を実践しているわけだが、基本はアメリカを頂点する金融市場のヒエラルキーの中で秩序を乱さなかったことだ。ところがリーマンショック後、分配があまりにも不公平になった。
アメリカでは22兆ドルを超えて膨張する債務の中身は、その75%は65歳以上のブーマーに向けに使われてきたという統計があり、時代の不公平さに、ミレニアルの怒りが爆発、彼らの過半数は資本主義より社会主義の方が優れていると考えるようになった。
対抗するように、2020年に民主党のAOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)下院議員を落選させるため、NY州では誰かが200億円が寄付したらしい。だが、もしこのままAOCが躍進し、アメリカが本当に社会主義国家になると、どうなるか。機会があれば、ジョン・ロウ後の「ミシシッピーバブル」における中央銀行の「債務株式化機能」と、現在ウォール街が注力する、利益を出せないウーバーやリフト、ピンタレストなどの「ユニコーン銘柄」の上場の類似性を触れてみたい。
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