アメリカの「社会主義化」が妄想ではない理由 2020年の大統領選は1896年の再現になる?

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だが個人的には、メルトアップ(ファンダメンタルズの改善がないにもかかわらず、乗り遅れまいとする投資家が殺到、市場が強気に転じること)を警戒する記事は、いったん相場の最終局面を示唆すると考える。十分に資金を投下していないプロの運用者にはメルトアップは最悪である。だがそのようなトークに便乗することが、賢い投資スタンスとはいえない。

最高値更新の後に安値更新が起こり得るワケ

過剰流動性下のゲームでは、たとえ株価が最高値を更新しても、次は安値更新があると考えるべきだ。恐らく相場はそれを繰り返す。なぜなら、今の世界経済をみるとき、実体経済と株式市場はもはやかつての関係ではなくなっているからだ。

今や、頭(前者)と尻尾(後者)は逆転し、実体経済は株式市場に支配されている。その証拠は、資本主義経済をリードしてきた覇権国家アメリカのFEDが、株式市場次第でその政策をころころ変えていることにある。元々FEDの使命はインフレの抑制と持続的安定成長のダブルマンデート(2つの使命)だった。だが、今はそこに「金融市場の安定、平たく言えば株を支える」という非公式な3つ目のマンデートが加わっている。これを市場では「FEDプット」と呼ぶ。

今の消費中心の実体経済は、資産価格の変動の影響をもろに受ける。ならば結局インフレや賃金水準を決めるのも、資産価格だ。よって株が下がれば緩和策を出し、株が上がれば緩和策を引っ込めるという予想が成り立つ。なんらかの理由で予期せぬインフレが起きるまで、中央銀行は神のような存在だ。市場プレーヤーはそれを先読みしてここまで株を買い上がった。

だが、ここにきて、欧米の中央銀行に先行し緩和策を断行した中国では、当局がブレーキを踏む兆候が出ている。世界を見渡してもインフレはまだないが、1990年代以後の大規模な景気後退は、景気循環やインフレによるものではなく、ハイテク産業や住宅のバブル崩壊がもたらしたものだった。

よって中央銀行は、緩和策を維持しながらも、麻薬中毒患者の治療を放棄することはない。問題は、過去にここまで「ジャブジャブ」と金融緩和した事例がないので、その治療が手探りであることだろう。

2010年に2008年秋に起きたリーマンショックのシステムリスクの危機が去り、一息ついだところでこんどは欧州危機をきっかけに再び株が下がり始めると、当時のベン・バーナンキFRB議長は「どんな手段を使っても」と宣言して、大規模な金融緩和を始めた(QE2=量的金融緩和第2弾)。これを受け、議会の公聴会では共和党保守派議員が「アメリカはバナナリパブリックになるのか」と詰問した。するとバーナンキ議長は、「アメリカはバナナリパブリックにはならない。なぜなら、量的金融緩和は一時的な手段であり、過剰に膨らんだバランスシートは元に戻す」とその時には返答してみせた。

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