ドコモの「値下げ」はなぜ実感を持てないのか 5期ぶり減益でも、値下げ幅小さく見える逆説
もっとも、ドコモの従来の料金プランでは、購入端末に応じて毎月の通信料から一定額が割り引かれる「月々サポート」が入るものが主流だった。新料金プランでは、こうした売り方が近く規制されることを見越し、端末代金と通信料金を分けた「完全分離」で設計した。そのため、新料金プランには月々サポートの割引はない。これも考慮して新旧プランの負担額を比較すると、実際の値下げ幅は2~4割もないのは確かだ。
さらに、この完全分離によって、端末を購入する際の値引き額が小さくなる。従来の通信契約と端末販売がセットになったやり方ならば、キャリアは端末代を大きく値引いても、その後に毎月入る通信収入でペイできた。
だが、分離プランでは、端末を単独で売らなければならないため、通信収入をあてにした値引きはできなくなる。その結果、値下げで端末の通信料が安くなっても、高価なスマートフォンを購入する際の負担額が増えるかもしれない。
利用者の負担総額は最大4000億円減少
それでも、ドコモの説明を冷静にみれば、やはり相当の値下げをしていることが分かる。ドコモによると、値下げによる2020年3月期の減収影響は、2019年3月期比で2000億円にのぼるという。大半のユーザーが新料金プランに移行する数年後には、2019年3月期と比べて最大4000億円の減収影響があるという。どちらの金額も、端末の値引き額の縮小が通信料収入を押し上げる効果を加味した上での数字だ。
つまり、大半のユーザーが新料金に移行した段階で、端末代と毎月の通信料を合わせた利用者の負担総額は、最大4000億円減ることになる。それだけの規模での値下げを断行するため、ドコモは大幅な減益に沈むことになるのだ。
これだけ還元額が大きくても値下げ幅が小さく見えるのは、通信料金を下げるやり方では、1人当たりの値下げ効果が分散してしまうからだ。
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