日本人が知らない「アボカド」生産農家の悲哀 アメリカでアボカド価格急騰のワケ

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アボカドはまた、「森のバター」ともいわれるほど、栄養価の高いバランスの取れた果物ということもあり、なおさらアメリカ人に好まれるようになった。

こうした中、宣伝効果もあって4、5年前からはアメリカン・フットボールの頂上決戦「スーパーボール」を観戦しながら、ワカモレとトルティーヤチップスを食べるというのが習慣化しつつあり、スーパーボールのひと月前からアメリカのアボカド輸入業者から注文が急増。この時期にアメリカに輸入されるアボカドの量は毎年増えており、今年は11万トンと前年(8万5000トン)から3割近く増えたという。今やアメリカ人1人当たりのアボカド消費量は年間30キロと、2006年の2倍に増えている。

アボカドを生産するとほかの果物の生産は難しい

メキシコにとっても、アメリカ人は「太客」だ。現在、メキシコで生産されているアボカドの8割はアメリカで消費されている。ただし、今に至っても、アメリカ市場に輸出できるメキシコ産アボカドは10万ヘクタールという最大規模の栽培面積を持つミチョアカン州で生産されたものだけ(全国32ある州の内ミチョアカン以外に27州でアボカドが生産されている)。

アボカドの栽培には多量の水が必要で、ミチョアカン州では年間4度の収穫ができるとされているが、その土地の滋養を食い尽くすという傾向があることからいったんアボカドを生産すると、その後ほかの種類の果物などの生産は難しいとされている。

現在、メキシコはアボカドの世界生産量のほぼ34%を占め、年間でおおよそ164万トンを生産。目下、31カ国に輸出しており、その年間輸出総額は20億ドル(2200億円)と、メキシコにとっては主要農産物となっている。アメリカ以外の主な輸出先は、カナダ(生産量の7%)、日本(同6%)、ヨーロッパ(同3%)で、近年は中国への輸出も急騰している。

2017年5月に南米コロンビアのサントス大統領(当時)が、アメリカのホワイトハウスを訪問した際に、コロンビア産のアボカドをアメリカは輸入するのではないかと憶測されたこともある。トランプ大統領がサントス前大統領に輸出に協力する姿勢を示したからだ。アメリカにとって、コロンビアは南米における最も信頼している国であることからその輸入も注目された。が、依然メキシコ産アボカドのアメリカ市場での支配が続いている。

メキシコ、コロンビア以外に、中南米ではブラジル、ペルー、チリ、ドミニカ共和国といった国で生産されている。

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