｢高齢者増の団地｣URあの手この手で挑む改革 無印良品やIKEAとのコラボも実施している

ほかにも、高齢者向けのサービスも展開する。100のUR賃貸住宅団地には生活支援アドバイザーを常駐的に配置し、高齢者が安心して暮らせるようにさまざまな相談を受けるほか、希望する人には週1回安否確認的な電話をするというサービスを行っている。

全国のUR賃貸住宅ではパートナー事業者と連携し、センサーを利用した見守りサービスを行っている。これは一定時間何も反応がなければ登録していた緊急連絡先に連絡がいくというものだ。月額900円で2016年3月から開始しているサービスだが、URの担当者によれば「年間約1000件のお申し込みがある」という。

また、団地ごとの取り組みとして千葉県の豊四季団地では柏市・東大・URで協働した「長寿社会のまちづくり」をはじめ、大学生に団地に住んでもらう取り組みや共同花壇の整備、集会所を利用したイベントが行われている。

ここまで、高齢化に対応するUR賃貸住宅の取り組みを見てきた。多様な取り組みを行っていることはわかったが、そのほかにも課題は山積している。

建て替えには反発もある

まずはUR賃貸住宅全体で老朽化が進んでいることであろう。UR賃貸住宅はピーク時の1972年には4万5000戸建設され、1979年以前に管理を開始した住戸は約47万戸ある。これらの住宅は今後、建て替えや集約も含めた検討が行われていくが、現在住んでいる住民からの反発は強い。

なぜなら建て替えになったとしても事業完了まで10年以上はかかることや、今まで住んでいた場所が失われること、家賃の上昇といったことがあるためだ。

しかし、リニューアル住戸にしたとしても見た目の外装の古さが否めないために、住戸として魅力は落ちる。さらにエアコンが設置されていない住戸もあり、設備面で民間賃貸住宅に比べて見劣りする部分もある。立地も大都市郊外の立地が多く、都心回帰が強い現状では苦戦を強いられる。

また、家賃についても、安いのは老朽化した住戸だけだ。建替えを行った「ひばりが丘パークヒルズ」は約40平米の1DKでも9万円台で、周辺の民間賃貸住宅とほとんど変わらない。これは1999年から家賃のルールを変えたためだ。

これまではUR賃貸住宅（ルール変更当時は公団賃貸住宅）の建設原価費用および修繕費などの諸経費を70年償却で回収する「原価家賃方式」であったが、これをUR賃貸住宅の周辺にあり、類似している民間賃貸住宅を基準に家賃を定める「市場家賃方式」へ変更した。

ひばりヶ丘団地が建て替えられて生まれた「ひばりが丘パークヒルズ」（筆者撮影）

老朽化でリニューアルした住戸は安いが、建替えたUR賃貸住宅にはお得感がないのが実情だ。

保証人が居なくても入居可能なことや、礼金・仲介手数料・更新料がかからないことは魅力であるが、それ以上に立地面と老朽化した住戸における設備に見劣りする部分がある点が大きい。

そして、UR自体が独立行政法人という立場上、難しい立ち回りを国から強いられている。民業補完を原則とし、民間賃貸住宅の市場を乱すことはできない。さらに資金面でも、経営改善によって繰越欠損金はほぼ解消したものの、がぜんとして10兆円の有利子負債が残る。そのため、経営体としても安定化を図る必要がある。一方で、地方自治体の運営する公営住宅とは違った役割を求められている。

ただ、老朽化している住戸は多いとはいえども、URは賃貸住宅を約70万戸抱える「日本最大の大家」である。そのストック住戸は重要な住宅インフラであり、活用の仕方によってはスクラップアンドビルドとは違った新たな住環境作りや街づくりをすることのできるポテンシャルは秘めている。

近年はリノベーション住宅が高く評価され、また、高度経済成長期に整備されたインフラの維持・管理に関する議論が盛んになっている。そんな今だからこそ、UR賃貸住宅について再評価し、もっと賢く社会的に活用できるようにするのがいいかもしれない。

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