「高齢者増の団地」URあの手この手で挑む改革 無印良品やIKEAとのコラボも実施している

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具体的には公営住宅と区別するために広い居室面積の確保を行い、新しいライフスタイルとして「DKスタイル」を普及させた。従来は畳にちゃぶ台という食事スタイルであったが、日本住宅公団の賃貸住宅ではテーブルを据え付けることで新たな洋風の生活スタイルを居住者に提案したのである。

新しいライフスタイル提案の効果もあり、住宅公団の賃貸住宅はたちまち人気となり、「団地族」という言葉を生むほどになった。1966年には入居倍率が最大51.4倍(東日本地区)と驚異的な数字にもなっていたという。この人気は1970年代中頃まで続いた。この頃に住み始めてずっと居住している人が多いために高齢化率が高くなり、平均居住年数も長くなっているのである。

若者獲得にあの手この手 

高齢者の多さはUR賃貸住宅にさまざまな課題を突きつけている。例えばコミュニティーの担い手不足や孤独死の増加などといったものが挙げられる。また、UR賃貸住宅が建てられたのは1970年代が多いため、バリアフリーの面でも難点がある。

これに対してURでは「まちづくりとの連携、多彩な施策を行いながら、多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まいとまちを作る」ことを目指している。そして「地域のコミュニティーを維持したり活性化したりということを考えたときに、やはり若者の流入は必要不可欠と考えている。実際自治会と話をするときに若者が入ってきてくれるといいという声は多く聞く」(UR)という。

UR賃貸住宅では、こうした目指す方向性やニーズを踏まえながらさまざまな施策を展開している。まず挙げられるのが、住戸のリニューアル・バリアフリー化や賃貸住宅団地の建て替えといったハード面の施策だ。

冒頭で取り上げた常盤平団地。この1室に住む20代男性の部屋は「リニューアル」が行われた住戸だ。中に入ると白を強調することで全体的に明るくなっているのが目立つ。キッチンもきれいになり、給湯器は新しいものに取り替えられている。元々洗濯機置き場はベランダに置かれていたが、リニューアルで室内に移された。

常盤平団地のリニューアルされた部屋の様子(筆者撮影)

間取りも3Kから2DKに改装され、1部屋の面積とフローリング部分が増えており、広々としている。

45平米・2DKのこの部屋は1カ月約6万円。単身者やカップル向けの住戸と考えれば十分広いうえに近隣の相場と比較すると賃料も安い。

耐震基準が気になるところだが、URによればきちんとクリアしているようだ。

住人の男性は「家賃に対して部屋が広く、しっかりと内装のリニューアルがされている。耐震もしっかりしており安心感がある。また周辺の住環境が整備されているので、公園も多く、窓から草木が多く見えることも魅力だ」と語る。

URの担当者によれば「和室の洋室化やバリアフリー化、水回り設備の改修を行うリニューアルは1980年以前に管理開始した団地で行っており、2017年度末時点で10万戸を改修している。対象となる賃貸住宅に占めるリニューアル住戸の割合は約20%。UR賃貸住宅の全体から見ると約14%で完了している。長期居室の人が多く、空室になったところから行っているので、このような割合になっている」という。

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