29歳のパラ卓球選手が伝えたい「諦めないこと」 パラメッセンジャーになった金子和也選手

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2月9日、神奈川大学附属中でスピーチトレーニング修了講演を行ったパラ卓球の金子和也選手(筆者撮影)

「2020年東京パラリンピックが近づくにつれ、パラアスリートが情報発信をする機会は増えてくる。今後はインタビューや講演をしていくために必要なスキルや経験を身につけて、自分が本当に伝えたいことを相手に伝えられるようにしなくてはいけません」

そう話すのはパラ卓球(クラス7)の金子和也選手だ。2020年7月に開幕する東京オリンピック・パラリンピックまで1年あまり。22競技が実施される東京パラリンピック各競技の代表選考争いも始まっている。

それに伴い、メダル獲得に期待がかかる選手たちは、メディアからのインタビューや、講演への出演依頼が増加。自分自身の言葉で競技の魅力やそれにかける思いを発信することがスタンダードになりつつある。

ただ、パラスポーツのアスリートにとって、多くの人の前で話をすることは決して簡単なことではない。話したいことが頭の中に浮かんでいても、スピーチスキルが追いつかず、自分の考えを言葉にすることが難しいためだ。

パラ卓球選手(クラス7)の金子和也選手(筆者撮影)

金子選手も、「うまくプレゼンができない」と悩んでいたパラアスリートのひとりだ。パラリンピックを来年に控え、パラ卓球界をさらに盛り上げていかなければ……。

そんな思いとは裏腹に、自分の「伝えたいことを言葉で表現できない」ことに、もどかしさを感じ、苦しんでいたという。

こうしたパラアスリートの現状を打破すべく、日本財団パラリンピックサポートセンター(以下、パラサポ)は、コンサルティング大手のアクセンチュアとともに、パラアスリートやパラスポーツ指導者を対象に、自己発信能力の向上を目的としたスピーチトレーニングプログラムを開発し、2017年10月から本格的に動き出した。

育成プログラムを修了した受講生を“パラスポーツメッセンジャー”と位置づけ、「発信能力の高さ」「講演機会の多さ」によってA級、S級と認定レベルが向上。S級に認定されれば、パラアスリート自身で講演を開くことも十分可能だという。

金子選手も2018年9月からスピーチトレーニングを受講。筆者は、2月上旬に神奈川大学附属中学校にて行われた、金子選手のスピーチトレーニング修了講演までの道のりを追った。

両足が不自由でも挑戦し続けた競技人生

埼玉県出身の金子選手は、生まれつき両下肢に障がいを抱えていた。病名は、二分脊椎(にぶんせきつい)と脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)。両下肢の運動障害として、感覚がマヒし、思いどおりに足が動かせなくなる病気だ。

3歳時に腫瘍摘出手術を受け、その後のリハビリによって一時的に身体は回復した。しかし、小学校に上がったばかりの6歳のときに、病気が再発した。2度目の手術を受けるも、完治は叶わず、両足に障がいが残ってしまった。

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