ピコ太郎「日本よりも海外で超売れた」深い理由 天才・古坂大魔王がお笑い界に示した「希望」

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「PPAP」のテンポは「BPM(1分間の拍数)136」である。これは「マヌケさ」が醸し出されるテンポなのだという。例えば、小島よしおの「そんなの関係ねえ」はBPM128。どぶろっくの「もしかしてだけど」はBPM124。コミカルな歌ネタとして世間で人気を博すのは、BPM120〜140ぐらいのテンポの曲が多い。なぜなら、これが笑いを誘うために最適な「マヌケさ」を醸し出すテンポだからだ。

また、曲の冒頭に出てくる音にもこだわった。ここで古坂は古い電子楽器「TR-808」に入っているカウベルの音を使っていた。この音が何とも言えないマヌケさがあって気に入っていたからだ。

さらに、携帯電話で聴くことを前提にした音作りにもこだわった。携帯電話はスピーカーの性能が貧弱なため、どうしても音にひずみ(ディストーション)が出てしまう。だから、聴くときにそれが出てしまっても曲のクオリティーが落ちないように、初めから聴きやすい程度のディストーションをかけた音を作った。

そのほかにも「マヌケさを出すためにリズム音を変化させずループさせる」「曲に疾走感を出すために部分的にハイハットの音を抜く」など、この番組で古坂は「PPAP」を作るときの音楽的なこだわりについて詳細に語った。

「面白い」以外の魅力

音楽としてのクオリティーも高かったからこそ、世界中の人々にその魅力が伝わったのである。ただ面白いだけの楽曲だったなら、その動画がここまで拡散することはなかっただろう。

聴いていて心地よい音。そして、ただ心地よいだけでなく、どこかマヌケさがあって面白い音。音で笑いを作るプロである古坂だからこそ、「PPAP」を生み出すことができたのだ。

くりぃむしちゅーなど、同世代の芸人たちはみんな口をそろえて古坂のことを「天才」だと太鼓判を押してきた。しかし、「楽屋にいるときがいちばん面白い」「テレビではよさを発揮できない」などとも言われてきた。古坂のネタや芸風は、いわゆる漫才やコントといった伝統的なお笑いネタの枠には収まりきらないものだったため、そこではなかなか認められなかった。

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