ピコ太郎「日本よりも海外で超売れた」深い理由 天才・古坂大魔王がお笑い界に示した「希望」

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芸人は、ネタ番組では「ネタ」が求められ、バラエティー番組では「キャラ」が求められる。ネタの面白さが認められて世に出た芸人のうち、愛されるキャラを持っている人だけがテレビタレントとして次のステージに進むことができる。

古坂はマルチな才能を持った天才的な人間だったが、その才能はここ20年ほどのテレビバラエティーの文脈には乗らないものだった。芸人はテレビで売れなければ「売れた」と認めてはもらえない。そのため、古坂は雌伏の時を過ごしていた。

ピコ太郎がお笑い界に見せた「希望」

だが、ここ数年、状況がガラッと変わった。インターネット環境が激変して、動画サイトが乱立。若い世代を中心に動画サイトの支持者が増え、そこから新たなスターやブームが生まれる土壌ができてきた。

ネット上でウケるネタには、構成も伏線もフリ・オチも要らない。その場のノリが重視され、短い時間で気軽に楽しめることが重要だ。ノリのよさを売りにして、短い時間で伝わるネタを追求してきた古坂は、ここへ来てようやく時代の波に乗ることができた。

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言葉の面白さを掘り下げてきた従来の日本のお笑いは、独自の高みに達しているが、言葉の壁があるので海外進出とは相性が悪い。古坂は音楽を武器にその壁をやすやすと乗り越えていった。

彼はピコ太郎というプロジェクトを通して「日本の芸人が海外で通用するのか?」という昔からある問いに1つの答えを出した。もちろん、やり方次第では通用するのである。

平成が終わる頃にようやく示された「PPAP」という1つの希望。それは、日本の芸能界やお笑い界に風穴を開けて、世界への道を切り開くものだった。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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