団地を支える「高齢者と外国人労働者」の現状

「孤独死」が増え続ける限界集落が生き残る道

だが──陽の当たる坂道も、登りつめてしまえば穏やかな下りに転じる。

けやきの若木が巨木に変わるころ、団地から徐々に音が消えて行った。

子どもたちは「けやき通り」を駆け抜け、そして散り散りとなった。共同体ともいうべき地域住民同士の近い「距離感」を嫌う人も出てきた。ストにも負けずに出勤を続けた企業戦士も、その多くが定年をとうに過ぎた。

気が付けば、常盤平も老いの苦悩を抱えるようになった。

約5000世帯が住む常盤平団地は、住民の半数近くが65歳以上の高齢者だ。単身高齢者も約1000人。

いま、団地で大きな問題となっているのが「孤独死」である。看取る人もなく、ひっそりと生を終わらせる人が少なくない。2016年は10人が自室で亡くなり、死後しばらくたってから「発見」された。

団地の自治会長を務める中沢さんが、事態の深刻さを実感したのは2001年の春だった。

死後3年で発見された69歳の男性

団地の一室で男性の白骨死体が見つかった。

69歳、独り暮らしである。死後3年が経過した状態だった。

元会社員だった男性は妻と離婚し、子どもも独立してからは没交渉だったという。

「死体発見」のきっかけは、家賃の未納だ。

孤独な晩年ではあったが、男性は家賃を滞納することはなかった。共益費を含めた家賃3万3580円を預金口座からの自動引き落としで払っていた。水道光熱費も同様である。死後も引き落としは続いた。UR側が男性の死に気がつかなかったのは、滞りなく家賃が払われ続けていたからだ。

死後3年目にして預金が底をついた。家賃も水道光熱費も、そこではじめて延滞となった。URは幾度も督促状を出したが、なんの返答もない。そこで担当者が訪問して、ようやく男性の死亡が確認された。

警察が白骨化した遺体を運びだした後、民生委員が玄関ドアに貼り紙をした。

<家族の方がお見えになったら連絡をください>

そう、近所の誰も、男性の係累に心当たりがなかった。

「かつての団地では考えられないことだった」と中沢さんは言う。

タテもヨコも、つながりは薄い。隣に誰が住んでいるのか、名前は何か、働いているのか、年金暮らしか、知る機会は少ない。それ以上に関心がない。

そのうえ、夫や妻に先立たれ、孤立した生活を強いられている人は増える一方だ。団地はいまや限界集落に等しい。

次ページ「団地から孤独死をなくそう」
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