日本人の私がインドのベンチャーを育てる理由 現地で11社に投資、2号ファンドも立ち上げ

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――インドの最新のVC事情を教えてください。

インドにはエンジェル投資家(ベンチャー企業に投資する個人投資家)がものすごく多い。エンジェルラウンドでも1億円が集まる。しかし、シリーズA(シード段階の次の資金調達段階)になると、アメリカ系のVCが強い。(シリコンバレーに拠点を置くアメリカトップ級VCの)セコイアキャピタルやアクセル・パートナーズ、マトリクス・パートナーズなどが入ってくる。

彼らは(ファンドサイズが大きいので)1回(の投資)で5億円とか出したがる。シード段階でファイナンスを受けた会社のうち、3割くらいしか次のシリーズAのファイナンスを受けることができていない、残り7割は生き残っているが、ファイナンスに苦労している。

――アメリカ系の一流VCとの距離をどのように感じていますか。

セコイアやアクセルなど、アメリカ系の一流ファンドは当然中国にも進出している。彼らは、インドならインドのファンドに責任者がいて、1本のファンドで中国にも日本にも投資するようなことはしない。

われわれは日本の金融会社として、日本のお金にレバレッジをかけて、グロースマーケットに流し込んでいく、ということを裏のミッションとして考えている。日本の投資家も増やしながら、独立した形で、緩くフランチャイズを増やしていきたい。

われわれを水先案内人のように使ってほしい

――ファンドの投資家の顔ぶれは?

インキュベイトファンド、代表パートナーの本間真彦氏】ほとんどが日系企業だ。インドに戦略的意図を持った日系企業と組んで、インドにはつねに村上がいて、何かあったら村上に相談してもらい、場合によっては一緒に投資する。アライアンス先を探したり、進出の手伝いをすることを、ファンドの裏ミッションとして持っている。

【村上】2号ファンドでは、投資家として単純なリターンもとっていただきたいが、同時にインダストリーパートナー的な立ち位置で入ってもらいたい。僕らをある意味、水先案内人のように使ってもらい、一緒にインドを攻略しにいく。お金さえ出してくれれば、(投資家は)誰でもいいというスタンスではない。

――今後の目標は?

【本間】VCというのは非常にローカルなビジネスで、海外になると、リードの人にくっついていって、ちょっといい案件に乗っていこうというふうに投資スタイルを変える場合が多い。これは確かに一理あるのだが、アメリカの一流VCはそう考えていない。

セコイアは大物のプレーというか、「チョイノリ」しない。インドがブームだから、やってみようという気はない。10年、20年やるつもりでやっている。畑を耕すような形で10年、15年かけてインドを攻略するくらいの気持ちでやらないと、当然認めてもらえない。

【村上】僕個人としては、インドで本当にいけてる起業家が最初に5社、VCにあたるときに、最初に声がかかる1社になりたい。しかもそれを10年でなく、2、3年で持っていきたい。地場にはブルームベンチャーズなど、トップVCと呼ばれている存在があるが、例えばブルームに当たったら、次はインキュベイトにも声をかけるよね、と。そうなると、ディールメイクを自分たちから仕掛け、リードでちゃんと投資をし、その会社をセコイアが投資してくれるようなスケールまで育てる。

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