「体が硬い人」が知らないストレッチの常識 「思い込み」から抜け出すことから始めよう

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ストレッチの話をすると、多くの人から必ずと言っていいほど聞かれるのが 「最適な頻度」です。ハードな筋トレと違い筋肉にダメージを与えないので、ストレッチは毎日してもかまいません。むしろ収縮を繰り返す筋肉の過緊張をゆるめるためにも、できるだけマメに行うべきです。

「忙しくて時間がとれない」という人は、ご自身の生活に組み込みやすい方法を見つけましょう。

例えば私はランニングを習慣にしていますが、仕事の合間に時間を見つけて走るので、じっくりストレッチをする余裕はありません。ですから就寝までのすき間時間や入浴中、そして寝る直前の時間を利用しています。そうはいっても決してマメなわけではなく、できれば寝る前にまとめてやりたい。

「トレーナーなのにめんどうくさがり」と思われるかもしれませんが、あお向けからうつ伏せになるのも嫌なので、ベッドの上であお向けのままできるものだけを続けています。それと入浴中は、ほかにすることもなく筋肉が温まって伸ばしやすくなるうえ水圧と浮力がかかるので、普段はやりにくいポーズもできるというメリットがあります。

入浴ついでに湯船で、テレビを見ながら床で、オフィスでいすに腰掛けたままなど、習慣にできそうなものから始めてみてください。

頑張っているのに、柔らかくならない

ストレッチは気持ちいい範囲で行うからこそ効果がありますが「痛みを乗り越えれば柔軟性も最大限にアップするはず」などと思う気持ちもわからなくはない。「痛い」「つらい」「息が止まる」ほど頑張る人もいます。しかし、そのやり方ではじつはきちんと伸びず、かえって筋肉を傷つけるリスクが高まります。

前屈のストレッチで「あと少しでつま先に届きそう」というときに、反動をつける人をよく見かけます。たしかに一瞬グンと伸びますが、筋肉には瞬間的に伸ばされると反射的に縮もうとして緊張し硬くなる性質があります。これが「伸張反射」です。

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筋肉には、伸び縮みする情報を脳に伝えるために「筋紡錘」という、いわば筋肉を守るセンサーが埋め込まれています。その特徴は、急激に伸ばすと「筋肉が切れてしまう!」と脳にSOSを発信する点にあります。筋紡錘は「痛い」「苦しい」と感じるくらい強く伸ばしたときにはたらいて、筋肉に「縮みなさい!」という指令を出すから、伸ばそうとしても伸びないのです。これでは柔軟性の向上、維持につながらず、忙しいなか時間を使ってストレッチをする意味がありません。

静かに、ゆっくり、そしてなによりも気持ちよく。これが最高に効果的な静的ストレッチです。体感で言うと「強い痛みは感じないけれど、適度な伸び感が得られる」いわゆる、痛気持ちいいところまで伸ばしましょう。

中野 ジェームズ 修一 フィジカルトレーナー

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なかの じぇーむず しゅういち / Shuichi James Nakano

1971年生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士。アディダス契約アドバイザリー。日本では数少ない、メンタルとフィジカルの両面を指導できるスポーツトレーナー。トップアスリートや一般の個人契約者の、やる気を高めながら肉体改造を行うパーソナルトレーナーとして数多くのクライアントを持つ。現在は大学駅伝チームのトレーナーも務めつつ、講演会なども全国で精力的に行っている。 おもな著書に、『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(だいわ文庫)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、などがある。株式会社スポーツモチベーション

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