大阪百貨店戦争! 新店・増床ラッシュ、消費厳冬にも懲りず消耗戦へ秒読み《特集・流通大乱》

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JR大阪駅・阪急梅田駅周辺に林立する大型クレーン。建設ラッシュの同地区に最近、新たに「阪急」の文字が登場した。2012年春のオープンを目指し建て替え中のH2Oリテイリング傘下の阪急百貨店梅田店が、その姿を徐々に現しつつあるのだ。

08年央からの消費不況にどっぷりつかったままの大阪だが、それでも11年からは新店・増床が相次ぐ。だからこそ「大阪百貨店戦争」。消費不況といえども各社は「当初計画どおり」と、戦線を崩す様子はない。

大阪・梅田周辺のキタ地区には阪急・阪神、J.フロントリテイリング傘下の大丸百貨店が構え、なんば・心斎橋周辺のミナミ地区には高島屋や大丸本店、そごう、そして天王寺には近鉄百貨店と、大阪を代表するターミナル駅にそれぞれ百貨店が存在する。一日の乗降客数では梅田が240万人、なんば・心斎橋が100万人、阿倍野・天王寺が80万人と、いずれも大商圏だ。

 そんな大阪で、まずキタには11年、JR大阪駅に隣接する新北ビルへ三越伊勢丹ホールディングスが進出。「関西で唯一の勝ち組」とまで言われるJR京都伊勢丹の成功を大阪でも、と鼻息が荒い。大丸梅田店も、売り場面積がほぼ倍増となる増床が11年春完了。12年には、当初計画より1年遅れだが、前述の阪急百貨店の建て替えが完了し、売り場面積で現在の約4割増となる。09年春からは阪神百貨店の改装も本格化する。

商業施設のキタへの集中が進む中、これに対抗するように09年にはミナミの高島屋も約450億円を投じて増床を実施中。3年以内の経営統合を目指すH2Oとの共同戦線をどう展開するかも関心の的だ。

近鉄百貨店阿倍野本店も14年とやや遅くなるが、親会社・近畿日本鉄道が建設するタワービルに入居、売り場面積では国内最大となる10万平方メートルの新店舗が生まれる。現在の阿倍野店は、すでに建て替え作業が進行中だ。

セールでも人は来ず百貨店の魅力が低下

ビッグイベント目白押しの大阪だが、足元の商売の状況は、H2Oの椙岡俊一会長が「めちゃくちゃ悪い」と公言するように、底なしの状況を呈している。大阪地区の08年11月の売上高は前年同月比7・6%減と、9カ月連続のマイナスだ。

キタやミナミを歩けば「SALE」の文字がやたらと目につく。実際、大阪地区の百貨店ではセール実施日が増えており、3・4日に1日がセール日という試算もあるほど。高島屋や近鉄百貨店などが改装のために、1カ月間の長期にわたる「売り尽くしセール」を行っていることもあるが、それでも「さっぱり」とミナミの百貨店関係者はあきらめ顔。「女性のお客がちっとも服を買ってくれない」と嘆く。「婦人服が売れなくなると景気後退」というのが百貨店業界のシグナルだが、まさにシグナルは真っ赤っ赤の状態だ。

百貨店の主力は婦人服であることは言うまでもないが、「現在の消費者の収入からすれば百貨店の商品は手が届かない」というのは大阪でも同じ。売り上げ増をもくろむセールも、消費者の購買意欲をかき立てるには力不足だ。

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