大阪百貨店戦争! 新店・増床ラッシュ、消費厳冬にも懲りず消耗戦へ秒読み《特集・流通大乱》

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 百貨店が不振にあえぐ反面、独り勝ちを続けるユニクロに加え、アパレルではニッセン、千趣会といった通販業界が売上高を伸ばしている。

「百貨店よりもはるかに安いが、質もいい。その服を着ていることに満足する“ブランド感”もそこそこ満たされる。だから通販で、という顧客が増えてきた」と通販会社関係者は説明する。ブランドと値段の乖離が起きており、そのため従来の百貨店の顧客が他チャネルに逃げているというのだ。

「百貨店なんて、どこ行っても同じですわ」という声も根強い。世界の一流ブランドを集め高級感を出すが、大阪市内でも似たような店舗ばかり。「だから、パソコンの前に座って全国のお店で購入できる通販が、品ぞろえも価格もお得と思われ始めている」(前出の通販関係者)。

あるアパレル業者が現在の百貨店にこう警鐘を鳴らす。「昔は一緒にモノづくりをし、売っていきましょうという姿勢、意気込みが感じられた。この10~20年ぐらい、そんな意気込みが百貨店側から感じられない。業者任せで店頭をつくって、自分たちは知らん顔。だからどこ行っても同じ顔になってしまった」。

生活提案型など新業態開発は進むか

そんな声は当然、百貨店側にも聞こえてきている。だからこそ、今回の「戦争」を機に各社もあの手この手の戦略構築に乗り出し始めた。

「(現在の消費低迷は)景気がすべてではない。地域の特性と市場をつかみ、従来の百貨店の枠を飛び越えていく店づくりが必要」と近鉄百貨店の飯田圭児専務は言う。それにより、「量販店など、他業種に奪われた顧客を奪い返す」と意気込む。14年の新阿倍野店はその絶好のチャンスというわけだ。

飯田専務は、新阿倍野店では物販は全体の6割程度に抑えたいと明かす。目指すのは「モノ」と「コト」を融合させた店づくり。エステや健康など“非物販”の消費が増大している中、カテゴリーを融合させて商品幅を拡大させる計画という。

「どの百貨店も商品構成の6~7割は同じ」と飯田専務は指摘する。だからこそ、「モノとコトで売り場を編集し、百貨店が一つのコミュニティになるような新業態の百貨店を目指す」と言う。実際、08年9月に開業した阿倍野店に隣接する新南館「アンド」は1・4万平方メートルと規模は小さいながら、ロフトなどの生活提案型のショップを入れると同時に、自社のカルチャーセンターなども入居、顧客の感性に訴える店づくりにしたところ、
「予想以上の集客力」(飯田専務)を生んでいる。

阪急百貨店も08年11月にオープンした兵庫県の西宮阪急において、ライフスタイル提案型の売り場で市場開拓を図っており、売り場の新機軸創出に力を入れているようだ。

「器」ばかりが乱立しても、それが魅力あるものでなければ消費は喚起できない。そんな命題が各社に突き付けられている。今のままでは戦線は膠着したままの消耗戦入りは間違いない。「戦争」後の姿をどうアピールしていくか。そのメッセージを、大阪の消費者は待っている。

(週刊東洋経済)

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