「人口減少」時代への対処は江戸に学ぶといい

江戸が「ソロ」にとって最高の町だった理由

橋の上を往来するたくさんの棒手振りたち(絵:歌川広重「東海道―五十三次日本橋」メトロポリタン美術館所蔵)

棒手振りとは、天秤棒に荷をかついで売り歩く行商人です。野菜や魚、貝類、豆腐や納豆、みそ・しょうゆ・塩などの調味料、のり、漬物、ゆで卵、焼きトウモロコシなどバラエティー豊かな棒手振りが町中を闊歩していました。

江戸だけに見られたものとして、茶飯売りというものがあり、しょうゆ飯やあんかけ豆腐、けんちん汁などの食事そのものを売る棒手振りも存在しましたし、アメ、ようかん、カリントウ、お汁粉などといったデザート売りもいました。

食だけではなく、薬、おけ、ほうき、苗木、花、金魚、鈴虫まで売られていました。1659年の幕府の調査で、棒手振りは江戸北部だけで5900人、50業種もあったそうです。まさに、今でいう宅配サービスであり、Uber Eats(ウーバーイーツ)のようなものです。

江戸の町はコンビニ・タウンだった

杉浦日向子氏の「一日江戸人」には、幕末に日本に来た外国人が、「一歩も戸外に出ることなく、いっさいの買い物の用を足すことができる」と驚いたという記述がありますが、まさにそのとおりで、江戸の町は大きなコンビニ・タウンであり、多くのソロ生活者で成り立っていたソロ活経済圏だったと言えます。

とかく、昔の日本人は集団主義で、家や組織の共同体の原理に従い、個人としての主張を差し控える民族であると思われがちですが、そうでもないのです。江戸期、一部の上級武士や高級商人を除けば、「家」の意識より「個人」の意識が強かったと言えます。もともと江戸という町自体が、家を飛び出して個人が個人として集まった町でもあるわけです。

一人暮らしも多いし、結婚しても離婚も多かった。ソロ飯は当たり前だし、個人として経済的に自立するために、それぞれが起業しました。出版や芝居など娯楽産業が栄え、祭りがエンターテインメント化し、ときにはコスプレまでして、お伊勢参りなど旅や観光も盛んでした。

今で言う「ぐるなび」のような飲食店のランキングなどもありました。そんな情報インフラが栄えたのも、個人として生きていくために必要な機能だったからです。

つまり、これから日本が迎えるだろう人口停滞期とソロ経済社会というものは、すでに一度江戸時代に経験している社会でもあり、もしかすると日本人としての原型なのかもしれません。1人で暮らす人たちが多い社会だからこそ、個人単位で人とつながる意識を大事にする。そこにこそ、これから訪れるソロエコノミー時代を生き抜くヒントがあるのでは?と考えます。

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