メキシコに「国際結婚移住」した日本人妻の苦悩 孤独と向き合い気づいた本当の「強さ」
メキシコ・グアナファト州のピピラの丘に登ると、おもちゃ箱をひっくり返したような景色を見ることができる。山肌に積みあがるカラフルな家、黄色くて丸みを帯びた教会――。ファンタジー映画が好きなら、「こんな場所に住んでみたい」と憧れるかもしれない。
実際、メキシコの中でも比較的治安が安定しているグアナファトには、日系企業が多く、駐在している日本人家族も多い。そんな街に、国際結婚後に移住という形でやってきたのが、河村博美さん(仮名・34歳)だ。
日本に留学していたメキシコ人男性と結婚
絵を描くことが好きだった博美さんは、日本でグラフィックデザイナーとして働いていた。その後、得意の英語力を生かし、留学生をサポートする仕事に転職。そこで、夫となるルイスさん(仮名・37歳)と知り合った。
恋愛感情がなかった頃から、博美さんにはなぜか「いずれこの人と一緒になる」という、奇妙な感覚があったという。ルイスさんの両親が日本に遊びに来たときも、まだ交際していなかったため会うことはなかったが、「将来お世話になるだろう」と手土産を渡していた。
やがて博美さんの予感どおり、2人の交際がスタートする。優しくて、何事にも動じない包容力のあるルイスさんとは、一緒にいて安心できた。プロポーズされたときは、うれしくて薬指の指輪をずっと眺めていたという。留学期間が終わり、ルイスさんがメキシコに帰国するタイミングで結婚。博美さんもメキシコに移住する決心をした。
「ここに来たのは、今思えば勢いですね。私はメキシコのことを何も知らなかったので、妻として、夫の国を知りたいと思いました」。博美さんには、20代の頃に1年間、ワーキングホリデーでカナダに暮らした経験がある。メキシコはスペイン語圏だが、英語ができれば何とかなるだろう。ある意味、楽観的な気持ちで、メキシコでの新生活をスタートさせた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
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