メキシコに「国際結婚移住」した日本人妻の苦悩 孤独と向き合い気づいた本当の「強さ」
だが、駐在員の妻たちとのランチやショッピングに頻繁に出かける生活に、やがて疑問を感じるようになる。「楽しいけど、数年で帰国する彼女たちと、ここでずっと暮らしていく私とでは、状況が違う。もっと自分自身の生活を築くべきでは、と悩むようになりました」。
博美さんの周囲には、「国際結婚で子どものいない日本人妻」という、同じ状況の友人がいない。誰に悩みを打ち明けても、どこか相手との間に薄い膜がかかっているような、モヤモヤした気持ちがぬぐえなかった。
数年ぶりにスケッチブックを開いた
何かしなきゃ、と気持ちばかりが焦った。将来について、同じ立場からアドバイスをくれる人はいない。日本だったら、受け身でいても情報は次々と入ってくる。しかしここでは、欲しい情報は自分から探しに行かなければならない。だけど、いったい私は、何がしたいんだろう? 「そもそも、なんで私はここにいるんだろう」。自分で選んで来たはずなのに、博美さんはそう自問自答するようになった。
孤独は、嫌でも自分の内面と向き合う機会となる。改めて、やりたいことを考えたときに思い出したのが、昔から好きだったデザインだ。数年ぶりにスケッチブックを開き、時間を見つけては、絵を描くようになった。
「描きながら、少しずつ、元の自分を取り戻してる感じがします」。集中してペンを走らせている間は、妻ではない「河村博美」としての自分になれる。メキシコに来て2年、この土地になじもう、よき妻になろうと努力してきた。しかし、それは誰が求めた姿だっただろう。ルイスさんからも、その家族からも、よき妻であることを求められたことは、一度もない。
「実は去年、日本で年越ししようかって話があったんです。でも、私が勝手に、メキシコのクリスマスは家族で過ごすものだから、妻として日本に戻るのはどうかと考え、帰りませんでした」。そのときも、誰に何を言われたわけでもなかった。「後から、なんで帰らなかったんだろうってすごく後悔しました」。
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