本年度から新しい防衛大綱が施行される。わが国では原則10年ごとに国防の基本的な安全保障政策の基本方針を定める防衛計画の大綱(防衛大綱)が定められる。これに基づいて5年ごとに具体的な政策や装備調達量を定めた中期防衛力整備計画(中期防)が策定される。情勢に重要な変化が生じた場合や政権が変わった場合など、その都度改訂されることもある。
2度目の「10年かけて減らす」
新しい防衛大綱で定められた陸上自衛隊の戦車や火砲の削減に関しては大きな欠陥がある。いつまでに削減するという期間が明記されていないのだ。防衛大綱と中期防にはそれぞれ巻末に別表と呼ばれる主要部隊や主要装備を期した表が添付されている。前大綱の別表欄外には戦車と火砲(榴弾砲、多連装ロケット弾)の定数について以下のような記述がある。
「戦車及び火砲の現状(平成25年度末定数)の規模はそれぞれ約700両、約600両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約300両、約300両/門とする」
前大綱決定当時、防衛省の説明では防衛大綱中に10年かけてそれぞれ減らすと説明していた。ところが今度の大綱別表でもほぼ同じような記述がある。
「戦車及び火砲の現状(平成30年度末定数)の規模はそれぞれ約600両、約500両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約300両、約300両/門とする」
つまり前大綱の10年間で戦車400両、火砲300両/門を削減するはずが、それぞれわずか100両/門しか減っていない。つまり不要な戦車が300両、火砲が200両/門を余分に抱えていることになる。すなわち、旧式化して不要な装備が維持され、それに人員も拘束されていることになる。
削減される戦車が74式戦車だと乗員4人で1200名、同様に削減される火砲がFH70だとするとクルーが9名なので、直接要員だけでも1800名が本来削減されるはずだった。実際には火砲の削減には定員13人のM110も削減に含まれるのでさらに人数は膨らむはずだ。
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