日本の防衛「戦車・火砲」の削減が不十分な理由 期限が示されていないものは計画ではない

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仮に乗員、整備員、調達、司令部要員その他間接要員を含めて戦車1両あたりの人員を6人(主として用途廃止となる74式戦車の乗員は4人)、火砲(主として用途廃止となるFH70の定員は9人、M110 203mm自走榴弾砲13人)は12人として計算すると、戦車は1800人、火砲は2400人、合計4200人、1個旅団以上の隊員が「遊兵化」していることになる。当然ながらこれらを維持するための整備費、維持費などもかかっている。

さらに問題なのはその間、新たに装輪戦車ともいわれる、戦車砲を搭載した8輪の装甲車、16式機動戦闘車が導入されていることだ。本来16式は戦車の定数を削減することが前提であり、その前提がなされていない。これまで16式は87両が調達されており、乗員は4人だ。その乗員だけでも348名が必要となっている。人員不足になるのは当然だ。

陸幕や一部のマニアは、「16式は戦車じゃない」という理屈だろうが、16式はいわゆる戦車駆逐車であって、戦車の一種といえる。陸幕の16式導入の説明のとおり、敵の軽戦車までの対処であれば16式に105ミリ砲は過剰な火力があり、もっと小口径の主砲でも事足りたのではないか。

陸自の「社内政治」的には16式は「戦車」であり、削減した戦車の乗員を16式に当てることは規定路線だった。「本物」の戦車をろくに減らさず、「装輪戦車」を増やすのでは「契約不履行」である。むしろ機甲戦力の増強となり、防衛大綱の趣旨に反していることになる。

別表の注釈には削減の期限が書いていない。これは新大綱を了承した内局、いわゆる「背広組」も共犯と見るべきだろう。内局が計画どおりに戦車、火砲を減らすことを指導する気はなかった、ということだ。それを政治も問題視してこなかった。これは文民統制が効いているとは言えない。

莫大な借金に首が回らない日本

そもそも「削減計画」ならば「期間」が明示されて然るべきだ。期間や期限が示されないものを計画とは言わない。防衛省、陸幕の当事者意識と能力の欠如である。またこれを閣議決定した政治にも同じことがいえる。これを閣議決定した安倍政権の責任は重い。

今大綱中、陸自では74式、90式、10式、16式と4種類の「戦車」を運用することになり、訓練、整備、兵站は四重となり、部品も少数生産となりコストもかかる。だがわが国にこのような「冗費」を払う余裕はないはずだ。

国の借金や社会保障費は増え続ける一方だ。医療や年金などの社会保障費は高齢化に伴い本年度は34兆円に膨らんだ。防衛費も7年連続で増加し、5兆2574億円と過去最大となっている。

このような冗費を垂れ流している状態では無人機やUGV(無人車輌)、ネットワーク化などへの必要な予算も捻出できないだろう。また同様に新たな部隊への人材供給や定員不足の部隊への人員の充足もできまい。

実際この分野で自衛隊は中国を含めた他国から大きく後れを取っている。

仮に現在の大綱においても前大綱同様に戦車、火砲がそれぞれ100両/門しか減らないなら余剰の戦車が200両、余剰火砲は100両/門となり、「遊兵化」する隊員はそれぞれ1200人、合計2400人ということになる。

しかも現中期防は134両の機動戦闘車が導入される予定だ。そうであれば現中期防中に必要な機動戦闘車のクルーは536人となる。。この人員をはたしてどうやって手当するのだろうろうか。ちなみに次期中期防では何両の機動戦闘車が調達されるか明らかにされていない。

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