日本の防衛「戦車・火砲」の削減が不十分な理由 期限が示されていないものは計画ではない

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現大綱では「防衛力の中核は自衛隊員であり、自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上は防衛力の強化に不可欠である。これらは人口減少と少子高齢化の急速な進展によって喫緊の課題となっており、防衛力の持続性・強靭性の観点からも、自衛隊員を支える人的基盤の強化をこれまで以上に推進していく必要がある」と述べているが、これが非常に虚しく聞こえてくる。

さらに自衛隊では新たに共同部隊としてサイバー防衛部隊、1個防衛隊、海上輸送部隊、1個輸送群が編成される。陸自としては新たに弾道ミサイル防衛部隊(イージス・アショア部隊) 2個弾道ミサイル防衛隊、島嶼防衛用高速滑空弾部隊、2個高速滑空弾大隊が編成される。

だが、陸自の編成定数は15万9000人、内常備自衛官定員15万1000人、即応予備自衛官員数8000人であり、前大綱と同じである。さらに申せば、少子高齢化で、労働人口が減少している。いったいどのようにして隊員を確保するのだろうか。

防衛大綱は事態の深刻さをわかっていない

これに加えて、自衛隊は今世紀に入り財務省から固定費である人件費を減らせと迫られて、効果が高いが手を付けにくい「正社員」に相当する曹~将官には手を付けずに、「契約社員」に相当する任期制自衛官、すなわち、2士、1士、士長を減らしてきた。2士、1士の充足率は4割程度にすぎず、士長を含めた任期制自衛官の充足率は7割にすぎない。これがさらに悪化する可能性は否定できない。

このような事態になっているにもかかわらず、陸自では銃剣道や競走などのスポーツに専業者を当てて課業中に練習させている。これはその成績が部隊長に評価に影響するからだ。平和ボケもいいところ、と言わざるをえない。

繰り返すが「期間」や「期限」が明示されていないものは「計画」とは呼ばない。計画であれば期限を区切るべきである。それも削減に10年かけるのは長すぎる。中期防の間の5年間で戦車、火砲の定数を各300両/門に減らして、人員と予算を捻出して、必要な部隊や政策に振り向けるほうが望ましい。防衛大綱や中期防には納税者への責任を果たすという視点が欠けている。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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