イスラエル、トランプの「熱血支援」で政権続投 強硬外交にも世界最強のサポートで追い風に

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実際、投票日の1年ほど前のイスラエル報道機関の報道では、ネタニヤフ政権が倒れ、カホールを中心とした政権ができる予想が強かった。

当時、そう見られた理由は、大きく3つある。

まず1つ目はネタニヤフ首相の贈収賄疑惑が浮上したこと。2つ目はネタニヤフ首相による、対イランやパレスチナなど外交の強硬姿勢。イスラエル国内でも「やりすぎで、最大の貿易相手国EUに見放され、国際社会から孤立するのではないか」という反省が高まっていた。

そして3つ目は、ITやバイオ、軍事・セキュリティ産業などのスタートアップ企業を中心に経済発展をしたものの、その反面、所得格差が広がったことだ。最大都市テルアビブでマンション価格が高騰しており、住宅難が発生したことへの不満が高まっていた。

2019年のイスラエルの1人当たりGDPは、約4万ドルとなる見込みで、20年前の約2倍という立派な先進国である(IMF調査による)。日本とほぼ変わらないところまで達した。かつての貧しいイスラエルを知っている向きからみれば、これは驚くべき成長と繁栄だろう。経済成長は選挙ではネタニヤフ政権の手柄になるとはいえ、同時に、格差拡大や物価高、住宅難による不満も生まれている。このことは、左派・リベラル色の強いテルアビブでカホールが40%と第1党となり、リクードが24%と大差をつけられていることでも明らかだ。

戦後国際社会を無視したトランプの振る舞い

が、こうした劣勢を挽回したのが、トランプ政権の外交支援だ。

早くも2017年12月に露わにしたのが、過去のアメリカ大統領が誰も口にしなかった、「エルサレム首都宣言」と大使館移転構想だ。イスラエル総選挙直前の2019年3月には、イスラエルが1967年の第3次中東戦争以来、実効支配しているシリア領のゴラン高原についてイスラエルの主権を認める発言をし、ネタニヤフ首相をサポートした。

こうしたトランプ大統領による戦後の国際社会の現状を無視した強硬姿勢は、国連などから反発されたものの、ネタニヤフ首相の強硬政策を世界最強国の大統領が支援したものとして、イスラエル国民に歓迎されたはずだ。

そのうえネタニヤフ首相は4月の総選挙直前、「私が再選されたら、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府領となっているユダヤ人入植地(の一部)を併合する」と、国民向けのリップサービスに努めた。西岸併合というと国際社会を驚かす響きがあるが、もちろん西岸全体ではなく、マアレーアドミームなどユダヤ人人口が多く、イスラエルが工場誘致など多額の投資をし、パレスチナ人もその恩恵を受けている一部の地域を指している。とはいえ、パレスチナ自治政府にとって、うれしい話ではない。

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