育成選手制度は、「コスト削減」の道具か? アマでもプロでもない野球選手たち
迎えた2009年、秋のドラフト会議。
山室は4年春のピッチングを評価されて、千葉ロッテマリーズから指名された。しかしそれは育成選手としての指名だった。大学時代の実績がなかったに等しいとはいえ、桐光学園で甲子園に出場し、青学のユニフォームを着て神宮で投げた”野球エリート”が育成枠で指名されるのは、球界では異例のことだと言えるかもしれない。
山室は育成での指名について、こんなふうに話している。
「正直、やっと(プロに)なれるのかと、不思議な感じでした。高校のときには関東№1とか言ってもらって、相手がどこであっても抑えられる自信もあったのに、ケガをしてプロへの道をあきらめなければならなかった。4年後には絶対にプロへ行くんだと大学へ進んだら、今度はイップスになって、もっとプロが遠くなってしまって……だから育成とはいえ、やっと夢が叶ったのかと思ったら、嬉しかったのと同時に、不思議な感じがしたんです」
育成選手は、アマ以上、プロ未満
手放しで喜べなかったのは、もちろん育成枠での入団だったからだ。そもそも育成選手とは、どういう存在なのだろう。
日本プロフェッショナル野球協約に定められた規約には、「本規約に定める日本プロフェッショナル野球育成選手とは、前条の日本プロフェッショナル野球組織の支配下選手として連盟選手権試合出場可能な支配下選手登録の目的達成を目指して野球技能の錬成向上およびマナー養成等の野球活動を行うため、球団と野球育成選手契約を締結した選手をいう」と記されている。つまり育成選手とは、さらなる技術とマナーを身につけなければ一軍の公式戦には出られない選手だと定められているのである。
アマチュアから見れば、プロに見える。
しかしプロから見れば、プロではない。
契約時にはプロのレベルに達していないから、プロのレベルに達する選手に育てようというのが育成選手だ。アマ以上、プロ未満の彼らには契約金ではなく、300万円の支度金が支払われるだけ。契約期間は1月1日から12月末日までとなっており、最低参稼報酬は年額240万円。支配下選手と労働条件が違うため、日本プロ野球選手会には所属できない。
もちろん一軍の公式戦への出場資格はない。背番号は3ケタと決められ、0××と、ゼロから始まる3ケタでも可となっている。電話番号じゃあるまいし、こんな記号のような数字の羅列が背番号なのか。
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