川崎汽船、100周年なのに大手で独り負けの構図 みずほなど大手行支援でも、未来が見えない

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川崎汽船は強みの自動車専用船の不振に加え、事業統合したコンテナ船の整理で大幅赤字に転落してしまった(記者撮影)

海運大手の一角、川崎汽船の航路に、暗雲が垂れ込めている。

3月7日に川崎汽船は2019年3月期業績を下方修正した。売上高8400億円は据え置いたものの、最終利益は200億円の赤字から1000億円の赤字へと一気に引き下げ。最終利益は前期の103億8400万円の黒字から大幅赤字へと転落する。さらに同月29日には資本増強のため、劣後特約付きローン(劣後ローン)で450億円を調達すると発表した。国内海運大手3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)の中でも業績悪化は際立つ。今年で創立100周年を迎えた同社に何が起きているのか。

下方修正のリリースによると、赤字幅の拡大は、「収益力強化を見据え、抜本的な構造改革を断行」したためとしている。特に急いだのはコンテナ船関連だ。コンテナ船の運航事業は、日本郵船や商船三井と2017年7月に設立した事業統合会社、オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)に移管しており、現在はONE社に31%出資する立場。これまで自社で運航していたコンテナ船を同社に貸し出している。

川崎汽船のコンテナ船は2018年12月時点で64隻あり、うち57隻は船主から借り受けている用船である。ONE社に対して又貸ししているこれら用船の多くは、貸船料が借船料を下回る「逆ザヤ」状態。そのため違約金を払ってでも、契約期間満了前に解約することを決めた。

逆ザヤは海運市況が今よりも良好だった時期に借り受けた用船で発生している。借船料が高い中小型ばら積み船と合わせて期限前返船に伴う解約特損として約500億円、さらに今回解約しなかったコンテナ船についての損失引当金も150億円を計上した。

450億円の資本調達で窮状をしのぐ

最終赤字拡大で財務体質も悪化した。2018年12月末時点で20%を下回っていた自己資本比率は、このままだと10%台前半まで低下する恐れが出ててきたのだ。そこで自己資本増強の一環として、みずほ銀行や日本政策投資銀行、三井住友信託銀行から、資本性のある劣後ローンを450億円借り入れ。この劣後ローンでは借入額の半分が自己資本として認められることになる。

今後は逆ザヤ船の処分などの収益改善策によって、2020年3月期と2021年3月期の最終利益を、それぞれ約100億円押し上げる効果があると見ている。前期に発生したコンテナ船事業移管に伴う一時費用も消滅。非コア事業や不動産、政策保有株などの売却を進めることで、毀損した自己資本を穴埋めする方針だ。

今回の構造改革でV字回復を見込む川崎汽船だが、もくろみ通りとなるかは予断を許さない。

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