アメリカの「イタい黒歴史」に追随する属国日本 陰謀論やカルトを生み出す「空っぽの容器」

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あほか、そんな女性たまにしかいませんよと言いたくなるが、視覚的に幻想と現実の距離を縮めて、人の心を虜にしてしまう手法は、幻想を料理し尽くしてきたアメリカらしい発想だと言うしかない。

第二のファンタジーランド、日本

ただ、幻想と現実の距離を縮める手法は、現在、インターネットの技術と合わさったことによって、かなり危ういものになってしまったと思う。

『プレイボーイ』誌の手法を、個人対個人にまで浸透させたものの1つがアメリカ産SNS「フェイスブック」であるとはいえないだろうか。現実と幻想の距離が縮まりすぎて区別がつかなくなった人間によるストーカー事件は絶えないし、虚実ないまぜで人の心を扇動するフェイクニュースの温床にもなっている。

ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』の下巻では、現代アメリカの病巣が次々と描かれていく。人々は「いつまでも若いままでいたい」という幻想に傾倒して美容整形に走ったり、服装や趣味嗜好が子ども化したりし、政治はショー化、あらゆる人の「個人の自由」に寛容であろうとするがために相対主義に陥り、同時に「信じたい真実」を信じる人々の中では陰謀論が蔓延。

学問、メディア、政治の世界では、堂々と異を唱えるべき専門家が敗北してゆき、もはや異なる意見を受け入れられない人ばかり、「ポスト真実」の時代へと突入――。

これを「幻想に狂ったアメリカの帰結だ」とただ傍観してはいられない。何しろ日本は「幻想に狂ったアメリカに狂った時代」を過ごした。そして現在も順調に後を追っているのではないか? さらに、GAFAをはじめとするアメリカ企業の生み出すあの手この手のファンタジーに、いまなおどっぷり浸っているところだ。

魅力的な幻想は、人を現実から引き剥がし、空中浮遊させ、ふわりふわりと快楽を味わわせてくれる。しかし、そのまま地に足をつけられない人々が増殖すれば、現実の世界は空中分解、着地する場所はなくなってしまう。何が自分たちの世界をディストピアに向かわせるのか? 本書はそれを理解する一助として読む価値があるだろう。

「ニューヨークに行きたいかー!?」「……」「どんなことをしてでも行きたいかー!?」「……そんなに」――。

泉美 木蘭 作家・ライター

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いずみ もくれん / Mokuren Izumi

1977年三重県生まれ。24歳でイベント企画会社を起業し、即刻倒産。借金返済のために働く日々をつづったWebサイトが話題を呼び、作家デビュー。以降、週刊誌やWeb媒体等で執筆。TOKYO MX「モーニングクロス」「激論!サンデーCROSS」などテレビ番組でレギュラーコメンテーターとして出演。著書に『オンナ部』(バジリコ)、『エム女の手帖』(幻冬舎)、『会社ごっこ』(太田出版)等。趣味は合気道とラテンDJ。

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