アメリカの「イタい黒歴史」に追随する属国日本 陰謀論やカルトを生み出す「空っぽの容器」
プロテスタントの個人主義と、自分の信じたい物語を自由に信じる力、そして過剰なほどの理想主義とが合わさって始まったアメリカでは、次々と自由すぎる幻想が生み出され続け、ビッグバンを起こしていく。
聖書の預言を文字通り信じて「終末思想」に振り回されたり、「信じる自由」を極限まで行使した反知性主義的な魔術的思考が流行したり、悪魔信仰に魔女裁判、怪しすぎる新興宗教……。時代が下って医療が発達すると、今度はエセ医療の代表格として名高いホメオパシーにメスメリズム、骨相学、そして庶民の間には、フリーメイソンやイルミナティなどの陰謀論や、「UFOに誘拐されたと主張する人」の出現など枚挙にいとまがない。
だがその一方、アメリカ人は、入植者時代に培った「何もないところから事業を生み出す」という起業家精神がみなぎる人々でもあった。幻想や魔術的思考にも惑わされるが、同時にそれらをアイデアの源泉として投資を募り、事業化して売ってしまう力があるのだ。
1700年代に印刷事業で大成功したベンジャミン・フランクリンから、現代のジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグまで――もちろん彼らは有象無象の中のほんの一握りだが、その一握りの成功者を見て「自分にもできる!」と狂信できること、その狂信者に投資家が現れることは、「幻想を入れる空っぽの容器」であるアメリカの大きな強みといえるだろう。
「幻想のプロ」アメリカが生み出したショービジネス
とりわけショービジネスは、幻想大国の真骨頂だ。ハリウッド映画、ラスベガスのカジノ、ブロードウェイミュージカル。モンスター級のスターを続々輩出するのも、アメリカがその開拓時代から幻想を生み出しては人々を熱狂させる「幻想のプロ」だったという国民性に由来すると考えれば納得がゆく。
アンダーソンによれば、アメリカのショービジネスは、古くは1870年代、西部劇の原点ともなる巡業公演『バッファロー・ビルのワイルド・ウエスト・ショー』にさかのぼる。
「バッファロー・ビル」ことウイリアム・コディは、先住民と戦闘しつつ、自分自身が主人公となって開拓劇を演じるというガンマン兼、興行師だった。この肩書自体が自由すぎてアメリカらしいが、そんなコディが作り出したショーでは、先住民が先住民役を、白人が入植者役を、そしてつい最近まで最前線で先住民を殺していたコディが、「バッファロー・ビル」役として戦いの模様を臨場感満載で再現してみせたというから凄い。
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