アメリカの「イタい黒歴史」に追随する属国日本 陰謀論やカルトを生み出す「空っぽの容器」
またコディは、実際の武器や、戦利品として剥いできた先住民族の頭皮なども披露するという極限まで生々しい演出も行ったようだ。現代っ子は悲鳴を上げて逃げ出しそうだが、荒くれ者ばかりだった開拓時代の大衆は大興奮したことだろう。
この、現実と幻想をカクテルにした娯楽ショーは、技術の進歩に伴って、一方では「虚実ないまぜのニュース」という混乱につながってゆくが、もう一方では、映画やアミューズメントパークなど超巨大エンタメ産業の創業へと結びついていった。ショービジネスは、まさにアメリカのお家芸なのである。
私が田舎の小学生だった頃、開園間もない東京ディズニーランドへ遊びに行った叔母が、頭にミッキーマウスの耳のカチューシャをかぶったまま帰ってきて、なりふり構わず園内の様子を聞かせてくれたことがあった。
「ディズニーランドってすごいの! 本当に夢の国。どこを見ても徹底して絵本の中の世界みたいで、ゴミ一つ落ちていないの。トイレなんて舐めてもいいぐらい素敵なんだから!」
おばさん東京行ってすっかり頭が変になったよ、と子ども心に心配する反面、熱に浮かされたように語られるディズニーランドという場所への憧れも抱いたものだ。実際、あの徹底した演出には驚かされる。裏側にはかなりブラックな就業体制があると伝わるようになったが、それでも人気は衰えない。驚愕するほど並ばされるというのに、多くの来園者が夢中になる「夢と魔法の王国」は、幻想という引力で人々を魅了している。
現実と幻想を近づけたプレイボーイ誌
ディズニーランドは不健全な要素を一切排除した幻想で成功したが、ラスベガスはその真逆でいかがわしく、みだらな幻想をビジネスにした場所だ。そして、1953年に創刊し、たちまち月刊100万部の人気雑誌になった『プレイボーイ』誌は、それまでモノクロ印刷された粗悪品だったポルノ雑誌を、腕のいいカメラマンを使い高級感のあるカラー印刷にしたことが大成功を呼んだ。
アンダーセンは、登場する「プレイメイト」(『プレイボーイ』誌の女性ヌードモデル)が、「どこからどう見ても普通らしく見える幻想」を提示したことが天才的だったと分析する。プレイメイトの趣味や、好きな本など、生活に関する月並みな情報を提供することで、読者の男性たちにとってより「現実らしい幻想」を見せたのだ。
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