「23歳新卒の夫と47歳妻」が深く惹かれ合うワケ 小学生と中学生の娘と、若い夫の暮らしは…

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俊樹さんは結婚願望も強かった。身上調査も入るような特殊な仕事に就くことも決まっていて、就職前に身を固めておきたいという事情もあった。母親と息子ほどの年齢差は気にならなかったのだろうか。

「年齢を意識することはほとんどありません。ヨメのほうが私より若いと感じることもあります。改めて年齢を聞くと、『この人は自分より先に死んじゃうんだろうな』とは思いますね」

相変わらず表情は変わらない俊樹さん。心の中ではせつなく思っているのだろう。2人の子どもも望んだが、今のところ恵まれていない。顕微授精(精子を顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入する不妊治療)を8回も行ったが結果が出なかった。俊樹さんの精子の数が極端に少ないこともわかった。晩婚さんには不妊治療がつきものだが、彼のような「早婚さん」に課題があるケースもあるのだ。

何よりも子どもを大事に

志保さんの娘たちとの共同生活もうまくいっているとは言えない。家にいるとき、俊樹さんはテレビもある夫婦の寝室からあまり出ないようにしている。風呂に入っていいのは夜11時から12時までという取り決めがある。中学生の長女が敏感になっているからだ。

「年頃なので仕方ないと思っています。2人は仲が悪いわけではありません。私を介して俊樹さんと長女は旅行のお土産を渡し合ったりもしています」

今は子どもを最優先することに決めている志保さん。離婚前後は「毎日海を見ないと死んじゃいそう」と言って娘たちに心配をかけていた。そんな自分がいつも笑顔でいられるようになったのは「大切な人」である俊樹さんがそばにいてくれているおかげだ。長女はそれをわかってくれているという確信がある。

「長女は私と性格が似ています。テリトリー意識が強いんです。妹のことをつねに守ろうとするし、私がやっている不動産管理の仕事にも興味を示しています」

自分からはあまり発言しなかった俊樹さんが珍しく口を挟んだ。

「それはテリトリー意識ではないと思う。お母さんであるあなたを助けたいんだよ」

志保さんも俊樹さんも自分が「アダルトチルドレン」だと自覚している。悲しい思い出が多い生まれ育ちを変えることはできない。しかし、同じような心の傷を持つ者同士であったとしても、それを自覚して気遣い合えば、ぬくもりのある家庭を新たに築けるのだろう。

「惹かれ合ったのはアダルトチルドレン同士だったからだとしても、私たち夫婦はいま幸せです」

明るく言い切る志保さん。その表情に陰りは見えない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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