世界の「多様な常識」をどれだけ理解できるか
――康井さんはカナダ生まれでシドニー大学、早稲田大学を経て、リーマン・ブラザーズ、DCMとキャリアを積まれています。キャリアについてどのような考えを持っていますか。
康井:キャリア論という「軸」で考えたことはありませんね。キャリアうんぬんには、あまり関心がありません。それより、自分の興味、情熱があるところに素直に首を突っ込んでいたいと思っています。たとえば、シドニー大学に通ったのも、「英語圏で、まだ未知の国で学びたい」という思いからです。イギリスには行ったことがあり、アメリカには住んでいたので、いちばん興味があったオーストラリアを選んだという感じです。単純です(笑)。仕事でも同様で、キャリアを積み上げてという発想はありません。サッカーが好きだからサッカー選手になるように、好きなことを仕事にするのがいちばんいいと考えています。そして、そこで1番を目指せばいい。キャリアは後からつながります。
カナダで生まれて日本には10歳で戻ってきたのですが、カルチャーギャップは個人的にはありませんでした。周りにはあったかもしれませんが、僕は全然なかった(笑)。その後も、日本と海外を行き来しました。今でもそうですが、自然体でいると、たまに日本では「“ガイジン”っぽい考え方するね」と言われ、アメリカでは「日本人はそういう考え方するんだ」と言われることがある。元さんなんかもそうじゃないですか。
伊佐山:僕はけっこう使い分けていますね。日本で生まれ育って、日本の大企業にもいた。だから、海外から「非合理」「非効率」に見える日本大企業文化もなぜそうなのか理解できる。だから、日本人として「わかる」というアプローチをすることもあるし、「ガイジン」的な感じで私情を挟まずドライに交渉するときもある。
なぜか――というと、アメリカで日本人的な性善説のアプローチをすると喜ばれる反面、仕事では完全に付け込まれる。いわゆる欧米的発想は「弱いものを見つけたら徹底的につき、話を有利に進める」という世界で、いいか悪いかは置いておいて、日本の「義理人情」的な世界はグローバルなビジネスでは不利になることも多い。
ヨッシーもこうした両方の文化がわかって、その善しあしも経験しているわけで、これからのビジネスに生かせると思います。ポイントはシンプルで、「日本だけの常識では成長の限界がある」という点。これからは、日本の常識だけでなく、世界の多様な常識をどこまで知ることができ、理解できるか――という一個人の考え方や人生観が反映される時代になる。ヨッシーはいいバックグラウンドを持ち、今までの人生を生かしたカタチで起業しています。だから、僕はヨッシーに20代の人があこがれる経営者になってほしい。
日本のベンチャーシーンは、これまで各年代ごとにスターが出てきた。ただいつまでも、そのスターばかりに頼ってはいけないと思うのです。だから、ヨッシーには若い世代から「すごいね」とあこがれられ、上の世代からも「いい経営者になるね」と言われる起業家になってほしいし、なってもらわなければ困る。そのために会社としても個人としても支援していきたいですね。
「Don’t procrastinate, just do it(迷うな、動き続けろ)」――ということだ。
これは何も特別なスキルが必要なわけでも、「必死に頑張れ」というような精神論でもない。たとえ、目的地がわからなくても、方向が間違っていたとしても、その過程で経験する多くの出来事、多くの人との出会いに真剣に向き合い、大切にしていけば、そのなかで人は変わり、成長する――。
『シリコンバレー流世界最先端の働き方』伊佐山元著 P252抜粋
(構成:山本智之、撮影:今井康一)
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