学童保育「責任重大なのに低待遇」な現場の怒り アンケートからわかった指導員232人の胸中

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「今の『子ども50人に対して指導員2人』という自治体の独自基準にも疑問があるのに、さらに基準が下げられると指導員として仕事の責任を果たせない」(大阪府・30代男性・公立公営・任期付短時間・10〜15年)という声や、「学童がどんなところかまったくわからず、机上だけで決めている。子どもたちをモノとしてしか見ていないのか! 特にケアが必要な子どもたちには丁寧な保育が必要!!」(大阪府・40代女性・公立公営・非常勤・21年以上)という怒りの声も。

また、保育の質が低下し、社会的地位の確立が遅れるとの指摘も多かった。

「以前のように誰でもできる仕事だと思われる」(和歌山県・40代女性・NPO法人・常勤・10~15年)や、「この4年近くで学童保育や指導員の専門性や重要性が認知されるようになってきた。自分たちもさまざまな研修会等に参加して自己研鑽しているが、緩和されることで現指導員の士気が下がり、保育の質の低下につながる」(和歌山県・40代女性・NPO法人・常勤・7~9年)など。

「将来的には、保育士と同じように国家資格になってほしい。それほど専門的な仕事だと思う」(神奈川県・40代女性・地域運営委員会・常勤・21年以上)と願いを伝える人もいた。

アンケート結果から見えたもの

誰にでもできる仕事と思われることにより、待遇や勤務体制の悪化を危ぶむ声も多数。

「収入が減ると辞める人が出てくると思う。自分なら辞める」(大阪府・30代女性・民間企業・パート/アルバイト・7〜9年)、「保育士として働いていた頃、資格がない人がアルバイトとして入ってきたことで、負担が大きくなった。有資格者が辞めたという経験があるから、同じことが起きないか不安」(和歌山県・40代女性・民設民営・パート/アルバイト・1〜3年)。

「指導員はどんどん辞めていき、学童保育の未来がなくなる」(大阪府・30代男性・公益財団法人・非常勤・10〜15年)や「詰め込み保育になり、本来の待機児童対策にはならない」(大阪府・20代男性・民間企業・常勤・1〜3年)など、逆効果だと指摘する人も。

だからこそ「国は、どの地域でも指導員を目指したいと思えるような処遇改善を行うことで、指導員不足の解消をして、そのうえで、子どもたちにとって安心できる居場所としての学童保育を責任を持って実施してほしい」(大阪府・40代男性・保護者会・常勤・10〜15年)という提言もあった。

指導員として10年以上働いた経験があり、自身の子どもを学童保育に預けている代田盛一郎大阪健康福祉短期大学教授(児童文化・遊び論)は、「アンケート結果からは学童保育の多様化と同時に、その格差の広がりが示されたとも言える。従うべき基準の撤廃は、さらなる負のスパイラルを生む可能性がある。

大人の事情によって、基準を骨抜きにしてはいけない。待機児童を解消するために指導員の“量“を選ぶか“質”を選ぶかではなく、量も質も求めていく必要がある」と話している。

須藤 みか ノンフィクションライター

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すどう みか / Mika Sudo

長く上海を拠点に活動したのち、2014年秋帰国。現在は、大阪、在日中国人のほか、子どもと読書、子どもの育ちにかかわる職業などをテーマに取材。著書に『上海ジャパニーズ』他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。「本好きキッズの本棚、見せて見せて!」などに連載中。

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