急増する「お一人様」はホテルに歓迎されるのか 一人旅は「宿泊料金」が割高になるのは本当?

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星野リゾートによる運営開始後、初めての冬は「冬季営業を開始したことの認知度も低く、12月~2月くらいまでの部屋の稼働率は20%程度と非常に厳しい状況でした」(唐澤氏)という。

それでも12月に関しては、2年目からはクリスマスに特化した集客を行うなどして稼働率が伸びた。しかし、1月および2月は「熊料理を提供するなど突飛なこともやってみましたが、食事だけでお客様に来ていただくのには限界がありました」(唐澤氏)。

それが、運営4年目となる今年の冬の客室稼働率は、1月が50%超、2月が60%超と、「ほかの月の稼働率に近づきつつある」(唐澤氏)という。

このように冬の比叡山での難しいリゾート運営に成功したキーワードの1つが「一人旅」だという。2019年は全客室利用のうち1月は6.7%、2月は10.2%が1名での利用だった。

勝機は「厄除け・厄払い」

なぜ、ロテルド比叡の一人旅利用が伸びたのだろうか。その理由は、「比叡山やくばらい散歩」というプランのヒットによるところが大きい。同プランは、昨年夏から開始した宿泊者向けのオプショナルツアーで、比叡山という立地を生かし、延暦寺の厄除け、日吉大社の厄払いをスムーズに受けることができるのが特徴だ。

具体的なプランの内容としては、1日目は通常の宿泊プラン同様にゆったりと過ごす。2日目の朝は、早朝から比叡山延暦寺での勤行に参加し、宿に戻って朝食を取った後、再び延暦寺境内を散策。「梵字ラテ」を飲み、参加者限定の特別なお守りを授与される。その後、ケーブルカーで坂本(滋賀県大津市坂本)に下り、日吉大社でお祓いを受ける。ちなみに、宿と延暦寺の間の移動は、マイクロバスでの送迎がある。

生まれた年ごとの守護尊とその仏様を表す「梵字(ぼんじ)」が描かれたカフェラテ(筆者撮影)

同プランは必ずしも一人旅の需要喚起や冬の集客を狙って開発したわけではないが、結果的に一人旅で訪れる人が増えたという。唐澤氏は、「女性は、前厄・後厄含めて30代の6年間が厄年。年明けの早いうちに厄払いしておきたいとのことから、冬季にいらっしゃる女性のお客様が多い」と話す。

とはいえ、一人旅で宿泊するのは、料金が割高になるのではないかという心配もあろう。この点について唐澤氏は「通常、1人で宿泊される場合、2人1部屋で宿泊される場合の1.5掛け程度の料金を承りますが、ハイシーズンを除いて設定しているお一人利用優待料金であれば、お得にご宿泊いただけます」と話す。

具体的にはロテルド比叡の場合、2月の平日の料金を例とすると、2人1泊2食付きで1名あたり約2万5千円だ。通常ならば、1部屋を1名で利用するならば約3万7千円となるが、今シーズンは優待料金として3万2千円まで下げて販売した。こうした優待料金は、星野リゾートでは「星のや」「界」「OMO」といったブランドを問わず、大多数の施設で設定しているという。

ちなみに、ロテルド比叡に関しては一人旅利用は女性が圧倒的に多いが、同じ星野リゾートでも、「界 熱海」(旧・蓬莱)は、サッカーの長谷部誠選手が心のメンテナンスをするときによく訪れた旅館として著書で紹介されたことなどもあり、男性の一人旅が多かった時期があるという。

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