2015年3月、北陸新幹線の開業と同時に「金沢独り勝ち」という言葉が生まれた。それから3年半、沿線のみならず、他の新幹線路線と比べても、金沢とその周辺の活況はまぶしく映る。
観光は順調、オフィスビルも埋まるなど、まんべんなく開業効果が持続しているように見える。しかし、地元でもすべての人が恩恵を感じている訳ではなく、市民生活への影響も顕在化している。
「遅すぎた新幹線時代の到来」が街にもたらした変化について、青森学術文化振興財団の事業による筆者の調査結果をまとめた。
「駅から兼六園まで歩ける」
「以前なら金沢駅から市中心部の香林坊や兼六園まで歩こうなんて人はいなかった。今はごく普通に旅行者が歩いていますよね」。北陸新幹線開業後の変化を端的に示すエピソードを語るのは、JR西日本金沢支社の林成人・企画課担当課長だ。
駅からこれらの地区までは2.5kmほど、少し急いで30分余り。間に「金沢の台所」と呼ばれる近江町市場や尾山神社といった観光スポットも点在し、筆者もよく徒歩で往来する区間だ。歩道や街並みが整備され、道路沿いのさりげない景色を眺めるだけでも、金沢の空気を楽しめる。
今回の調査では、石川県庁や金沢市役所、金沢商工会議所、JR西日本金沢支社のほか、北陸経済研究所(富山市)などのシンクタンク、財務省北陸財務局・富山財務事務所、日本政策投資銀行・富山事務所といった機関に協力してもらった。そして、地方都市としては目覚ましい経済的、社会的な活況の輪郭をつかめた。
各機関の提供データによると、北陸新幹線の利用者は、開業初年度は在来線当時の3倍弱、2年目は8%減、3年目は前年度並みで推移し、指標となる上越妙高―糸魚川間の2017年度利用者は857万人だった。新幹線開業後、減便と機材小型化を余儀なくされた羽田―小松線は、2014年度から2015年度の利用が約36%減ったものの、2016年度で底を打ち、2017年度は109万7812人と前年度より微増した。
2009年に約231万6800人だった金沢市内の年間宿泊者数は、2017年は約319万3500人まで増加した。
このうち、約9万1600人だった外国人は、約44万8300人と4倍以上に増えた。増加分の4割を外国人が占めている計算だ。
ホテル需要も好調で、至る所でホテルの新築・改装工事が進み、東京五輪が開かれる2020年には、客室数が名古屋市などを抜いて全国10位以内になると予測されている。面接調査結果によると、観光客のリピーター率も満足度も高い。
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