開業2年「北海道新幹線」特需消えて正念場へ 進まない駅前開発、集客や地元連携にも課題

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開業から2年が過ぎた北海道新幹線。利用者は初年度から2割減った(写真:T2/PIXTA)

JR北海道が3月末、メディアを通じて公表したデータによれば、開業2年目の北海道新幹線の利用者は、在来線特急時代に比べ1.3倍の水準を維持しているものの、前年比21%減の181万9000人、乗車率は6ポイント減の26%だった。他方、JR西日本の公表データによると、北陸新幹線の3年目の利用実績は856万9000人、前年と同水準を維持した。北陸新幹線は九州新幹線・西九州ルート開業と同じ2022年度に福井県・敦賀延伸を控え、沿線で開業対策が加速している。

筆者はこの1年間の新幹線研究成果を発信するため、今年1月20日、青森市で公開フォーラム「北海道新幹線は『境』『絆』をどう変えるのか」を開いた。本州と地続きになって30年を迎えた道南の様子に触れつつ、「新幹線フォーラム」の模様を紹介しよう。

寒冷・多雪、人口減少の共通点

北陸新幹線開業を契機に、北陸・上越の両新幹線の狭間で生まれた「信越県境地域づくり交流会」の活動は、この連載でも第3回第4回で、その模様を紹介してきた。観光面の勢いが止まらない金沢市などとは別の視点から、寒冷・多雪な環境や人口減少・高齢社会への適応を目指す取り組みは、北海道新幹線沿線との親和性が高い。

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そこで、「北海道新幹線が地域にもたらした開業2年目の変化を検証する席に、信越のキーパーソンを招いて、戦略やノウハウを交換しながら、北海道・北陸新幹線の連携の端緒づくりを」と思い立った。フォーラムは青森商工会議所などと共催し、上越市創造行政研究所の内海巌氏、一般社団法人信州いいやま観光局の大西宏志氏に基調講演を依頼した。

一連の調査や議論が年度ごとの「輪切り」にならないよう、北海道新幹線沿線からは、前年のフォーラムで講師を務めた永澤大樹氏(函館商工会議所)、浅見尚資氏(道の駅みそぎの郷きこない・観光コンシェルジュ)をコメンテーターとして招いた。「北海道新幹線は『境』『絆』をどう変えるのか」というテーマは、北海道と本州・青森県、さらには、北海道、北陸に上越を加えた3つの新幹線の「境」「絆」を意識して名付けた。

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